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水泳世界選手権 五輪前年の壁攻勢糸口に

運動部 山本旭洋
 	女子400メートルリレー決勝のレースを終えた大本選手(下)。池江璃花子選手が不在の中、4人は予選で日本新を出す意地を見せた=光州(共同)
女子400メートルリレー決勝のレースを終えた大本選手(下)。池江璃花子選手が不在の中、4人は予選で日本新を出す意地を見せた=光州(共同)

 東京五輪の前哨戦となる水泳の世界選手権(韓国)が幕を閉じた。日本新記録を樹立するなど光明が差した種目もあったが、力を伸ばす世界と比べて日本は劣勢に立った印象は否めない。達成感や焦燥、悔恨−。選手らの言動からメダルの数では計れない思いが垣間見えた。

 「五輪の魔物」が存在するのなら、前年にも姿を現すのだろうか。競泳女子200メートル個人メドレー決勝を終えた大橋悠依選手(23)=彦根市出身=は涙に暮れ、取材エリアを無言で通り過ぎた。前回銀メダリストが泳法違反でまさかの失格。「変なレースをして落ちることがないように気をつけたい」と前日の予選後、どこか弱気な表情で発した一言が現実となった。失意の中で迎えた最終日。400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得し、「自分で自分を褒めたい」。表彰台での笑顔に主将の意地がにじんでいた。

 計11本のレースをこなし、自信を深めたのは大本里佳選手(22)=京都市右京区出身=。東京五輪で新採用される混合400メートルメドレーリレーは引き継ぎ違反で失格となり、五輪出場枠を逃す苦い経験も味わった。開催地・韓国の選手に送られる大声援に「来年、こういう声援なら本当にうれしいな」。初の世界選手権で、残り1年を切った大舞台への夢を膨らませた。

 日本の競泳陣のメダルは計6個。前回から個数は減ったが男子は200メートル自由形で五輪、世界選手権を通じて日本勢初の表彰台に立った。瀬戸大也選手(25)が2種目で優勝し、飛び込みの4人に続く五輪代表を決めるなど明るい話題に沸いた。一方、前回に引き続き女子は低迷。大橋選手らエース級の活躍だけでなく、若手の台頭に期待したい。

 かつて「シンクロ」と呼ばれたお家芸の一つ、アーティスティックスイミングも五輪種目すべてでメダルを逃し、窮地に追いやられた。日本の演技を「絵になるようでならない」と痛烈に総評したのは多くの五輪選手を育てた井村雅代ヘッドコーチ(68)。「負けて得るものがないのは悔しい」と各国の演技や会場の反応、ジャッジ傾向などの分析に徹した姿はかつてない危機感への裏返しだった。

 今大会はロシア、中国、ウクライナに次ぐ世界4番手の印象が強まった。メダルは非五輪種目のソロ2種目で3位に入った乾友紀子選手(28)=近江八幡市出身=らの銅4個。乾選手は「世界で勝つ難しさを肌で感じたからこそ、みんな変われるはず」とエースとして弱気な姿を見せなかった。

 大会前、競泳の元五輪代表の高橋繁浩さん(58)=草津市出身=が、五輪前年は「失敗は許されない」との感情に陥りがちだとした上で「来年じゃなくて良かった、と反省を生かせるのも1年前」と話していた。記録が及ばず唇をかんだ選手もこれで終わりではない。今大会が反転攻勢の糸口になることを願う。

[京都新聞 2019年7月31日掲載]

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