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大津市民センター再編問題 住民との意思疎通不可欠

滋賀本社 本好治央
大津市が再編を進めようとしている市民センター。市役所支所や公民館など複数の機能を備える(大津市北大路1丁目)
大津市が再編を進めようとしている市民センター。市役所支所や公民館など複数の機能を備える(大津市北大路1丁目)

 人口減少の時代を迎え、全国の自治体で公共施設の縮小、運営効率化が議論されている。大津市では、36カ所ある市民センターの機能再編を市が打ち出しているが、実施まで半年余りになった今も住民の賛否は分かれたままだ。道路や橋などを含めたインフラの維持管理が全国的に難しくなる中、大津市の例から見えるのは、行政と住民の丁寧なコミュニケーションなくしてまちづくりは進まないということだ。

 市民センターは市役所支所と公民館の機能を併せ持つ施設で、災害時には避難所にもなる。小学校区ごとにあり、市職員が常駐して住民票の発行や各種相談・連絡調整を担っているため「便利で安心」と感じている住民が多い。

 ただ、センターが整備された昭和の時代と異なり、近年は少子高齢化で各種証明書発行や貸し館利用が減少。一方で年間運営費は全36カ所で約12億円かかっており、費用対効果の観点から、市はセンターの在り方を2014年度から検討してきた。

 しかし17年秋に発表した「素案」でいきなり統廃合を打ち出し、つまずいた。廃止対象のセンター名を挙げて支所機能を10カ所に集約するとした案は、住民には寝耳に水で「行政サービスの低下だ」「高齢者のことを考えていない」と反発が広がった。

 市側は当初、財政状況などを説明すれば分かってもらえると安易に構えていたふしがある。だが、自治会が集めた1万5千筆の反対署名の受け取りを拒否するという対応のまずさもあって、住民の不信が深まる結果に。18年秋になって住民との意見交換会を学区ごとに開いたものの、参加者アンケートではセンターの「現状維持」を求める意見が7割を超え、市は素案を引っ込めざるを得なくなった。

 今年2月の修正案(実施案)では、24年度までいったん支所機能の統廃合を見送った上で、20年度から職員数の半減などで運営費を削減するとした。それでも6、7月の市民説明会では、機能低下を懸念する住民から「われわれの声が反映されていない」「作り直すべきだ」などの意見が噴出。市は再度の見直しを検討中だ。

 取材する中で、住民からは「市の将来像を考えれば、センターの縮小はやむを得ない」という意見も少なからず耳にした。一方、市は「利用者が少ないから減らす」「業務量調査の結果、必要ないと判断した」などとデータを並べて突き放すような説明が目立った。修正案の公表後も、一度深まった行政不信は根強く、来年1月の市長選への影響も懸念されている。

 市はこれまでの意見や要望を受け止め、住民との溝を解消すべく真摯(しんし)に手を尽くさねばならないだろう。コミュニケーションをおろそかにすれば相応の代償を負う。他自治体にとっても教訓となるに違いない。

[京都新聞 2019年9月11日掲載]

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