メニュー
 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

時代祭 1

パレードの列だんだん長く

 時代祭のあり方を象徴する行列がある。江戸、中世、平安と3つの時代を冠した「婦人列」だ。

 第二次大戦後、民主主義、男女平等が日本にもたらされた。婦人列はそんな昭和25(1950)年、登場する。主には、五花街のきれいどころの奉仕。それまでの男中心の重厚な行列に、京都ならではの華やぎが生まれた。

市穂さん(左)とつね桃さん

 颯爽(さっそう)としてまた艶(えん)然−なかでも鎧(よろい)姿で馬上に映える平安婦人列の巴御前は時代祭のハイライト。今年は先斗町の芸妓市穂(31)が務める。雑誌のモデルなど、先斗町でも際立つ売れっ子。「お座敷以外で、いろいろな人に見ていただくよい機会どす」−舞妓時代に紫式部、6年前には小野小町を経験し、時代祭はよく知っている。「気い引き締めて、立派に務めます」と、22日にむけ、心構えは万全。

 中世婦人列で、今年淀君に扮(ふん)するのは、祇園東の舞妓つね桃(19)。「新しい衣装も着せてもらえて光栄どす。ねえさん方のアドバイスも聞いて、楽しい1日にしたい」と、初めての大役を喜ぶ。

 東京奠都(てんと)で沈滞のきわみに陥った京都。さまざまな近代的勧業政策を模索し続けたあと明治28(1895)年、時代祭は考案された。都であった時代の風俗を再現し、日本の伝統文化はまさに京に、の心意気を示そうとした。そして、その見せ方が画期的だった。「パレード」という新形式。

大倉博さん、大田吉久さん、笹井雅広さん(左から)

 千年もの京伝統の時代絵巻を、欧米最新流行の展示スタイルでというこの手法に、日本中が驚いた。「不易(変わらぬもの)と流行(新しさ)」の併存が、その後のこの祭りの宿命となる。時代の節目節目、風が吹くたび、新しい列が加わってゆく。6列で始まった時代祭は今、18列に。

 「100年以上の歴史の中で、京都JC(青年会議所)が参加する列が登場したのは、ちょうどぼくらが生まれた40年前なんですね」−同JCが担当する「幕末志士列」で、今年、平野国臣に扮する笹井雅広(40)。時代祭が常に時代の趣向を取り入れていることに、思いが至った。新しい時代をつくった勤王の志士たちは、経済界で次の時代を担うJCメンバーの役割とも重なる。

 久坂玄瑞になる大倉博(40)は「次代を開いたすごい人ばかり。どんな人物だったかよく勉強して臨みたい」。近衛忠熈役の大田吉久(40)は「テレビで見るばかりでした。(偉大な人物を)えっ、自分がやらしてもらうのか…」。気持ちは高まる。

倉貫チエさん、田中くめさん、細川寿美枝さん(右から)

 この祭りで、厳しい仕事を花行列という華やかさに昇華したのが白川女(しらかわめ)風俗保存会。この列も昭和になって加わった。

 75年も白川女として生きてきた同保存会会長の田中くめ(93)は、昭和43年の「白川女献花列」創設と同時に一昨年まで、毎回その先頭を歩き続けた。凛(りん)として美しい本物の白川女の誇り。「ご鳳輦(ほうれん)のお供で本当に重要な役やのに、列が最後の方であんまりテレビとか写らんのが、残念やった」と目を細める。今年も御所に行き、保存会後輩の倉貫チエ(79)や細川寿美枝(58)らの行列を見守るつもりだ。

(敬称略)

 京都には、数知れないほどの年中行事や風習がある。それは、長い歴史と伝統に培われ、同時に時代の風を敏感に取り入れつつ、他の地域にない独創的な魅力を醸し出している。この魅力、人ありてこそ、生まれ育つ。人は何を思い、そこにはどんな営みがあるのか。京都の観光のさまざまなシーンを訪ね、人々に会う。

[京都新聞 2006年10月2日掲載]