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時代祭 4

ボランティアがやってきた

赤木尊文さん

 時代祭の行列の先頭を歩く「維新勤王隊」列。これを担当する平安講社第八社(京都市中京区朱雀学区)で今年、祭りを前に画期的な変化があった。大学生ボランティアの長期受け入れである。

 「学生に、時代祭を地域のなかで学ばせてほしい」−。講社本部の禰宜(ねぎ)赤木尊文(63)が、立命館大ボランティアセンターからこんな申し入れを受けたのは、今年五月中旬のことだった。

 当日限定のアルバイトは既に珍しくない。しかし、長期にわたって学生が地域に入り込み、住民と一緒になって行事に取り組むというケースは、時代祭百年余の歴史を通じ、かつてなかったことだ。

 赤木は思いをめぐらした。「時代祭がどうして維持できているか、地域の苦労を知ってもらえるいい機会になる。十社のうち、鼓笛の練習など長い準備をする八社だったら対応できないか」。

多田房男さん

 講社常務理事で八社の代表多田房男(80)は話を聞いて戸惑った。「かえって、準備の足手まといになるのでは」。しかし「地域の歴史を学び、地域の活性化に役立ちたいという思いは素晴らしい。地方から来ている学生にも京都を学ぶいい機会になると思った」と話す。

 学生ボランティア受け入れは、実現した。

 8月、赤木はセンターのプログラムに組み込まれた平安神宮での講義に臨んだ。明治初年、さびれきった京都の復興に、市民が立ち上がった象徴が時代祭。「この祭りこそ、京都活性化の原点。地元で、地域の人たちと一緒に、このことを体で知ってほしい」−。赤木は10人の学生を前に熱弁を振るった。

 先月20日、恒例の八社勤王隊入隊式の当日。市立西ノ京中学の体育館に設営された会場では、ボランティアの経済学部3年生橋本美和子(20)、政策科学部3年生の恒川史恵(20)、産業社会学部2年生の牧良子(20)の3人が受付に座り、慣れないながら懸命に、集まってくる100人ほどの関係者をさばいた。

前列左から恒川史恵さん、橋本美和子さん、牧良子さん。後列は足立陽子さん(右から2人目)と田中敏貴さん、管野未可さん(同4人目と6人目)

 学生たちはそれまでに、装束の虫干し作業や祭りに向けた役員のあいさつ回りに同行するなど、朱雀学区に入り込んで、同月初旬から、事前のさまざまな行事の手伝いを続けている。橋本は驚いた。「時代行列を実現するのに、その前に、寄付金集めやあいさつ回りとこんなにいろいろ地域で面倒なことが行われているんだ」と。

 京都に生まれ育ちながら時代祭を、きちんと見たことがなかったという産業社会学部二年生の田中敏貴(21)は「伝統の祭りのさわりだけでも学びたい。普通じゃ参加できないこと。誇りに思い、22日が楽しみ」と。

 東京出身で、外国人に日本の文化を伝えたいと、国際関係学部に今年入学した管野未可(18)は「いろいろな工夫や、地域の人たちの努力が、日本の誇る伝統を守っている」と、強く感じ、感動したという。

 学生たちと一緒に来ていた同センターのボランティアコーディネーター足立陽子(26)は、プログラムの成果を実感している。「見る側から、地元で支える側にまわることで、祭りへの考え、姿勢がずいぶん変わったようだ。列に参加できない女子学生は、ビデオや冊子の作成など記録係として、八社の隊列保存に貢献しようと自発的に提案してきた」と話す。

 今年から始まった学生ボランティアの活動は、伝統的な運営方法に新しい血を注入し、時代祭を一層活性化する端緒となるかもしれない。

(敬称略)

[京都新聞 2006年10月5日掲載]