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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

京の師走

錦市場 4

島本裕次さん

 今年11月3日、錦市場はイタリア・トスカーナ州の州都フィレンツェで歴史的な1日を迎えていた。同市の中央市場(公設)と友好提携を結んだのだ。食品中心の市場同士の国際的提携は、極めて珍しい。

 フィレンツェ旧市街のほぼ真ん中に位置するサン・ロレンツォ広場に隣接している中央市場。調印式はその入り口近くの広場で、正午すぎから始まった。式場には、中世の姿そのものの衛兵や楽団が15人ほども登場する格調の高さ。

 式は、厳かで華々しく進んだ。ファンファーレが鳴り響き、これからの両市場の友好発展を祝福する。

 調印式に臨んだ組合の副理事長島本裕次(70)は、そんな雰囲気に緊張しながらも、この記念すべき式を錦市場の関係者に伝えようと、写真撮影を担当した。「式の前には、日本食の展示や魚屋さんの店先ですしも振る舞った。すごい反響で、日本の食への関心は高いなあと感じた」と思い返す。

 島本が言うように、当日は、フィレンツェはもちろん、遠くはドイツなどから多くの日本人も集まり、海外でも錦の知名度の高いことを印象付けた。

西村達也さん

 島本も、自ら手がけるノリを通じ、和の食材が海外で需要が伸びていることを実感している。この友好提携調印のあと、市場同士の事業は、まだ具体化していないが、島本は、錦が「洋」への窓口をもったことが重要。今後が大切と話す。

 「ゆっくりと友好と交流を深めることで、錦にとって、今後、時代時代で変化する食の需要に、洋を視野にいれた新しい提案もできる。メリットがあると思う」と。

 ところで、イタリアは、米国式のファストフードに対抗して打ち出され、世界に広がる伝統の食文化に根差すスローフード発祥の地でもある。

 これに共感してミッションに同行したのが西村達也(46)。柳馬場で、オリジナルなブレンド米が自慢の米穀店を経営し、こだわりのおにぎりやダンゴも販売。スローフード協会の会員でもある。「友好提携で錦が、今すぐイタリアの食材をどうのというより、スローフードに代表されるイタリアの食文化に学べることが大きい」と、話す。

 「日本の食文化の根幹である米をもっとよく知ってほしいと、常々考えている。イタリアと日本は伝統も風土も違うが、イタリアの伝統の食文化というものを大切にしようという考えは、ほんものを売る錦と共通している」といい「京都同様、職人の街でもあるし、フィレンツェとの友好は錦にとっても意義がある」と西村。

河内昌史さん

 一方で、イタリアの野菜が、日本の八百屋の考えとは全く違う形で売られていることにショックを受けた参加者もあった。

 今回のミッションに青年部会の会長として加わった河内昌史(40)だ。富小路西入ル南側で伝統京野菜など高級野菜を販売する。「うちは料理屋からの注文がほとんどで、形や大きさについて厳しい。それから考えると、イタリアの八百屋の店頭は、見栄えもいろいろ」と違いに驚いた。

 しかし、こうしたことも今回の提携があればこそわかったこと。「貴重な経験だった。わずかな間、しかも初体験だったので、イタリアでは、プロの料理店から一般家庭まで、あれでいいのか、もう少し調べたい。今後、たとえば語学も含めて関係を深めれば、品ぞろえや販売方法など、ヒントをえられるかもしれない」と、交流継続の重要さを強調する。

 来年3月には、サン・ロレンツォ市場の錦市場訪問が予定されている。イタリア・フィレンツェは、錦市場にとって将来への願ってもない刺激となりそうだ。(敬称略)

[京都新聞 2006年12月7日掲載]