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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

京都検定 1

全国で増えるファン

所川晋吾さん

 1月末になると、京都商工会議所の会員サービス部のフロアは、いつにも増して電話の対応に追われる。こんな状態が、今では恒例になった。同部は、京都・観光文化検定試験、通称「京都検定」の担当セクション。受験者への合否通知が間近になり、問い合わせが急増するのだ。

 「1月29日に合否の通知は発送しましたが、いやあ、細かい問い合わせの電話がひっきりなしでした」と、同部人材育成担当課長の西川実(40)。検定に第1回からかかわる。

 だが、この忙しさもそう苦にはならない。問い合わせ以外に、いかに検定が楽しく、試験の結果を心待ちにしているかなど、全国各地の受話器の向こうから、京都や検定への好意的な反応が伝わってくるからだ。「中には、京都言葉を聞けただけでうれしい、という声まである。検定が全国に知られているなあ、京都ファンは本当に多いんだ」と実感する。担当者冥利(みょうり)に尽きる瞬間。

 「それに、回を重ねるにつれ、受験者は進化、あるいは深化している。こりゃ京都生まれだからと安閑としていられない」。京都を意識し勉強するようになった。「今まで漫然と見ていたものが、すごい価値があったんだ、とあらためて知ることも多くなって」−。それほど京都や歴史に興味があったわけでもない西川、自らの変化に驚く。

吉田麻子さん

 これは、受験した人たちにも共通する感慨のようだ。

 「京都で仕事しているのに、京都のすごさを何も知らない。検定の受験勉強をして、思い知らされた」というのは所川晋吾(35)。昨年末、初歩の3級を受験し、合格した。

 受験のきっかけは、京都信用金庫から昨年、京都の産業を支援する財団「京都産業21」に出向したことだった。京都企業を他府県の企業に売り込むのが所川の主な仕事。「京都のことを知らないと格好つかないな」と、受験する気になった。

 本格的な勉強は、試験2週間前からだったが、1日講習会は「学生時代には考えられない」集中力で臨んだ。「3級といえども、この合格で誇りをもって京都企業を売り込めるような気がします。今年は2級にも挑戦する予定」と意気込む。興味の尽きない幕末維新の知識が深まる楽しみの一方で、ものづくりの伝統に裏打ちされた京都企業の勉強もして、今の仕事や信金の業務に生かせればと思う。

 新たな自分が見えてきた、と感じるのは合格率10%内外という最難関の1級に合格した吉田麻子(26)だ。

西川実さん

 夫の転勤先の長野に住んで、生まれ育った京都の素晴らしさに気づく。「京都をもっと知りたいという思いが強くなりました。その腕試しが検定で、テキストを丸暗記するぐらい読みましたね」と吉田。一昨年2、3級をクリアし、昨年末1級に挑戦。「ちょうど京都に帰って早々のことでした。この知識と英語に磨きをかけ、京都で、いろいろな人に観光案内する仕事ができたらうれしい」と目を輝かす。

 同じ1級に合格した会社員中野馨(30)は、再挑戦だった。「大学時代に京都にきて、お寺を見る楽しさに目覚め、検定挑戦はその延長」という。「受験用の詰め込み知識です。まだまだ、京都を知ってるとはいえません。これから、もっと勉強しないと」と、謙虚だが、とことん京都を極めていくつもりだ。

 2004(平成16)年から始まった京都検定は、昨年末の試験で3回目。毎回、1万人を超える受験者が京都の街を訪れる。そして新たなビジネスが生まれ、全国各地、さまざまな業界で「〇〇検定」が次々登場している。「京都通」度の目安ともいう検定は、今「観光の京都」を象徴する事業になった。

(敬称略、「京都検定」は5回掲載予定)

[京都新聞 2006年2月5日掲載]