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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

ものづくりを見せる 5 社会への役割

若手育成 事業で貢献の思いを

高橋博樹さん

 古風な街並みと新しいセンスが入り交じる、京都市中京区の三条通界隈(かいわい)。烏丸通に面したビルに、3年前開館した「京都伝統工芸館」=TEL075(229)1010、有料=は、京都らしい工芸作品の展示や販売にとどまらない。技を身につけた若手の職人に、活動の場を与える、という役割を担う。

 「伝統工芸の世界で、若い作家が活躍するのは至難のこと。ここを拠点にがんばりたい」。昨年秋、同館をオフィスにNPO法人(特定非営利活動法人)京都匠塾を立ち上げた高橋博樹(35)。大学で建築を学び、設計事務所に勤めた経験がある。

 だが昔、父親に教わったものづくりの魅力が忘れがたかった。同館と系列の京都伝統工芸専門学校(南丹市)で、京指物(さしもの)(箱などの組み立て技術)をやろうと木工を学び、昨春卒業。職人の道を歩み始めた。

新谷秀一さん(右)と松村賢治さん

 「洋風の中に、何げなく和を感じさせる作品が得意といえるようになった。10コースで学んだOBを中心にネットワークし、共同製作(コラボ)を行っていく。ここに展示し、本場京都の関係者の厳しい目で見てもらい、評価を受けたい」と高橋。縦割りを排した、新しい伝統工芸の世界を夢見る。

 「職人になりたいという希望者も多く、学校をつくりましたが、七年やってみて、がっかりしました。とにかくせっかく技術を身につけても、発表の場すらないんです。こんなことでは、伝統工芸の人材が育つわけないと思った」と、館長の新谷秀一(67)。学生や卒業生が展示、販売できる同館設立に至った動機を語る。

生越多惠子さん

 「例えば指物の技は、後継者不足で廃れようとしていましたが、今では工芸学校で毎年、30人もの人材が生まれている」と学校長の松村賢治(57)。「こうした貴重な職人の技を、この館ではぐくみ、発信していければ」と願う。

 「特に子供が大事です。竹細工、絵付けなど館の体験コーナーも一段と拡充したい。社会貢献という視点から、京都の伝統的なものづくりの魅力を、もっと広げていきたい」と新谷。拠点としての館の役割を考える。

 自社の特色あるものづくりや理念の公開を、どう社会貢献につなげていくか、メーカーでも関心は高い。センサーやそれを組み合わせた制御技術で、抜群の知名度のオムロン。京都市下京区の本社に隣接する新ビルで、新しい展示施設開設をめざしている。

 「ものづくりを通じて社会にかかわっている会社、人と機械のベストマッチをうたうわが社のこだわりが、うまく出るものに」と話すのは、プロジェクトチームの中の展示を担当する広報部の生越(おごせ)多惠子(54)。3年半前入社し、部長を務める。

笹田淳さん

 「私にとってもこのプロジェクトは、創業者、現会長と社長の考え、判断など勉強するいい機会になった。特に事業を通じて世の中に役立つことが、社会貢献につながるという、創業の精神は普遍的だなあと、感銘しました」と生越。

 作業を進める同主査の笹田淳(44)も、苦労も多いが、学ぶことも多いという。「120もの事業の集合体であるわが社が何をしてきて、これから何をめざすのか、これを簡潔に来場者に説明する、難しいですねえ」−。「特に、歴史展示は体験していないことが多く、書籍や先輩、OBの証言が頼りです。情報集積、ヒューマンネットワークの重要さをあらためて感じます」と話す。

 「展示は、チャレンジングな創業以来の歴史的なもの。それに、安心、安全、環境、健康というソーシャルニーズへの対応をめざす当社のものづくりを体感してもらえる、ちょっと夢と未来を感じるものとの2つで構成したい」と生越。世界中にいる社員にとって求心力があり、来場者にはオムロンの社会への思いが伝わるコミュニケーションスペースにと、7月開設へピッチが上がる。(敬称略)

「ものづくりを見せる」=おわり

[京都新聞 2006年2月23日掲載]