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五花街合同公演 1 上七軒

最古の自負 幕開け舞台に情熱込め

花柳輔太朗さん

 天神さんで知られる京都市上京区の北野天満宮。森閑と樹木に覆われた境内の東側に、心休まる風情の古い町並みが続く。花街最古の歴史を誇る上七軒。春は「北野をどり」でにぎわう。

 その歴史は室町期にまでさかのぼり、天満宮と日本を代表する織り産地の西陣とともに歩んできた花街。静かな中に、なぜかはんなり心浮き立つ独特の雰囲気がある。この上七軒が今回、合同公演の序幕を担当する。選んだ演目は、長唄「蓬莱(ほうらい)」。幕開きにふさわしく、華やかなお祝い気分いっぱいの舞台となる。

 「初っぱなの踊りには、今回の合同公演の成功を祈るという意味合いもあります。気を遣います」と話すのは、上七軒の専属師匠として踊りを指導する花柳輔太朗(47)。

梅嘉さん

 「金屏風(びょうぶ)に紋付きで格調高く。それでいながら芸妓さんらしい雰囲気がでるような舞台になれば、と。精神的なことにもなりますが、本番では、やるべきことをきっちりと、ワザで見せてもらいたい」と期待する。

 この期待を一身に引き受けるのが「蓬莱」を一人で踊る芸妓の梅嘉(うめか)。着物が着られる仕事とあこがれ、上七軒の舞妓になった。「お酒が飲まれへん」などのコンプレックスを、持ち前のさっぱりした「体育会系の性格と話術」で克服、充実の24年目だ。

 「一人の舞台どすし、最初やし、晴れがましいことでプレッシャーもあります。今思てるのは、ちゃんとけいこして、見ていただいた後に《ようがんばってはるな》というてもらえたら、ということどす」と、顔が輝く。「合同公演は、全国からいろいろな方がお越しになるし、立方(たちかた)から地方(じかた)にまわって盛り上げてくれる姉さんたちや妹分の苦労に報いるためにも、一生懸命務め、恥じない踊りをみせたいと思てます」と気合十分。

勝喜代さん

 演劇青年のアルバイトからいつの間にか、上七軒の大道具棟梁(とうりょう)になっていたという中田節(55)。狂言方(舞台監督)として、チョンチョンと、幕開けの柝(き)を打つ。大道具を担い35年。それぞれの花街が流派を競う合同公演は、毎年の楽しみという。「今年は若手が地方としてがんばってくれる。裏方としても、舞台に専念してもらえるよう十分なおぜん立てをするつもり。心おきない舞台で、存在感を示してほしい」と話す。

 三味線はもちろんお座敷芸にも通暁する芸達者として、他の花街にまで名のとどろく大ベテラン芸妓勝喜代(かつきよ)は踊りの名手。上七軒の芸妓組合長を務める。

中村泰子さん

 戦後間なしに開かれた島原、五番町、中書島を加えた八花街の合同公演に出演した経験も。「私とこは私とこどすが、よそさんに比べて、上七軒はどうのといわれんように、気張ったもんどす」。「今の若い人はみんなしっかりしてはりますし、いけます。立方も地方もみんなで協力して、いい舞台になるよう務めてほしおす」と、後輩たちを思いやる。

 上七軒のお茶屋組合長中村泰子は、積極的に舞妓を育てるなど上七軒の活性化に力を尽くしてきた。「合同公演はほんまに励みになります。毎回、今年も、ちゃんとフィナーレに舞妓を出せるように、と一生懸命」と話す。

中田節さん

 本来は、代々続くお茶屋の女将(おかみ)。「私は、あんまり苦労もせず好きなようにさせてもろてきたので、ちょっと甘いかもしれまへん。けど、7年ほど前、組合の役をするようになってから、上七軒をなんとかせんと、という気になったんどす」と芸・舞妓育成の動機をいう。合同公演は、上七軒の特徴を示す大事な機会と思う。「小さい花街でも、なにくそという気概でがんばってること知ってもらうためにも、いい舞台をお見せしとおす」と開催を心待ちする。

 京都の5つの花街の芸妓・舞妓が勢ぞろいし、それぞれの粋と華美を競う「京都五花街合同伝統芸能特別公演−都の賑(にぎわ)い」。各花街とそれを支援する京都伝統伎芸振興財団などの主催で、今回が14回目となる。磨き上げられた芸で、各花街の個性がはんなり浮き立つ舞台、そして、かれん、華麗な芸・舞妓が演じ出す格別の情緒…京都を代表する比類ない伝統文化の結晶である。16、17両日、京都市左京区岡崎の京都会館で開催される公演を前に、花街の人々や公演関係者らに会った。

(敬称略、登場する花街の順番は上演順。「合同公演」は6回掲載予定)

[京都新聞 2007年6月4日掲載]