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五花街合同公演 5 祇園東

結束生かし江戸風組踊 粋に存在感

藤間紋寿郎さん

 知恩院近くの東山通を西に入ると、薄暮にネオンの海が広がる。そんな中に、和風構えの古いお茶屋がそこ、ここ散見される。昔ながらの花街の雰囲気。その風情は、周囲の新しさゆえ、一層際だつ。

 花街祇園東。南北は四条通から新橋通の間、東西は東山通から花見小路まで。一帯は、膳所藩邸があった場所とされ、明治時代に祇園甲部と分離した。規模は五花街の中でも最も小さいが、毎年秋に開き、今年で50回目を迎える「祇園をどり」で、存在感を示す。

 今回の合同公演では、五番目で《切り》を担当。長唄「俄獅子(にわかじし)」が演目だ。

まりこさん

 「獅子ものは、元来能からきたもの。格調高く重厚な印象ですが、今回は、切りの舞台でもあり、にぎやかに、花街らしく華やかで粋(いき)な獅子を見せたい」というのは、藤間流の舞踊家藤間紋寿郎(86)。祇園東の師匠となって30年。京都花街の独特な踊りの中、江戸風の歌舞伎舞踊を強く意識した指導で知られる。

 「吉原の年中行事『にわか』の余興でできた組踊の一種。江戸の雰囲気が十分に感じられる舞台に。東は、少人数ですけど、日ごろから、みんな頑張っている。今回もベテランを中心に若い2人も負けずに熱心で、東の特色が出るいい舞台になります」という。

 「俄獅子」を踊る立方は3人。その中心となるのはまりこ。常から、祇園東の芸・舞妓を引っ張る。「江戸の芸者というのは、京都のはんなりとはまた違(ちご)て、粋に演じなあかんので、ちょっと勝手がちがいます。お師匠さんによう教えていただいてけいこさせてもろてます」と。

満彩美さん

 合同公演は、祇園東の存在をアピールする大事な舞台と思う。「よそさんから比べると、うちら何もかもが小さく、少人数。それでも、五花街の1つとして、お茶屋のおかあさん、大きい姉さん方、舞妓さん、うちら芸妓と、東の1人1人が一生懸命やってるのどす。みんなが小さいながらも懸命に頑張ってることをぜひ、舞台を通じて見てほしおす」と力を込める。

 「俄獅子は、初めて踊る演目。うまく関東の粋さが出せればええのどすけど、晴れがましおすね」というのは満彩美(まさみ)。祇園東のお茶屋で生まれ育った。3つから子役で舞台に立つ。母も現役で、五花街でも他にない母子芸妓として知られる。

 「みんな頑張ってるその代表として出さしてもらう。踊りがお好きで来ていただく全国からのお客さん、ごひいき筋がごらんになり、そして各花街のお姉さん方との競演どすし、すぐに評価がでます。小さいけど東もようやってるなぁといわれるように」と、気合が入る。

雛菊さん

 最も若手は雛菊(ひなぎく)。舞妓から芸妓になって3年、初めて合同公演で芸妓として踊る。「初めての役やさかい、そら緊張します。けど、自分のできること精いっぱい出したいと思てます」とけなげ。「小ぢんまりした花街。確かに他に比べたら人数も少なおすけど、その分姉さん方はようしてくれはる得な面があります。ちゃんと見習っていい舞台にしたいと思てます」という。

豊治さん(右)と岡嶋良一さん

 祇園東には、京都の花街では最長老の芸妓組合長豊治(とよじ)の存在がある。芸妓歴は78年にも。今なお現役の地方(じかた)で三味線の名手だ。「大事な切りの踊り。ひとりが頑張っても何にもならへん。3人みんなが均整とれてやることどす」とアドバイス。「私は昔、八花街の合同公演に出さしてもらいました。これは、よっぽどようできるもんしか出られしまへんどした。今度の公演でも、選ばれたもんとして、そのぐらいの気概で気張ってほしおすな」と激励する。

 「小さいゆえにまとまりやすいのが、うちの特徴」と取締の岡嶋良一(63)。サラリーマンを辞め、3代目としてお茶屋を継いだ。「モットーの和気あいあいで、よその芸妓さんや舞妓さんに負けんよう、しっかりした舞台を見せてほしい」と。目指すは、小粒でピリリ、祇園東ここにあり。(敬称略)

[京都新聞 2007年6月8日掲載]