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五花街合同公演 6 支える

錬磨した伝統の芸 守る心意気熱く

今年のフィナーレ「舞妓の賑い」の合同けいこ風景(5日、祇園甲部歌舞練場)

 5つの花街それぞれの演目の後、舞台は一段とはんなり輝く。フィナーレとなる演(だ)し物は、各花街の舞妓20人による舞踊「舞妓の賑(にぎわ)い」。

 今回は、京の四季の移ろいを唄(うた)い込んだ「京小唄」を各花街それぞれの流儀で、舞妓が舞や踊りを披露する。舞妓がかれんに華やかに踊る様はもちろんだが、その振りの、微妙な違いこそ、この合同公演の極め付きともいえる。

定永好夫さん

 舞妓といえば、花かんざし。「合同公演は、もう14回にもなりますか。こんなんでよろしいか、と先代の四世井上八千代さんのところに、花かんざしのサンプルをお持ちし、見てもらいました。きのうのことのようです」と話すのは、舞妓の飾る花かんざしの製造・販売定永好夫(54)。合同公演が始まった時、フィナーレの舞妓総踊りで使用する花かんざしを納めた。江戸末期からの店と伝わり、祇園町はじめ花街とのかかわりは深い。

 「6月なので、飾りは柳とナデシコ。舞台用の特注のため、ナデシコの花の数を少し多くして目立つように。以後、それを修理しながら、今も使っていただいています」と。「舞妓さんの飾りや踊りは同じでも、流派のしぐさの違いが一堂で見られるというのは、たいしたもんです」と、公演を評する。

縣季男さんと前原和比古さん(左から)

 裏方中の裏方は、大道具。「各花街からの道具帳(舞台装置の原図)に基づいて、会場の京都会館に合わせ、舞台美術、装置などを準備する。それがうちの役割です」と話すのは、舞台美術専門の会社社長縣季男(64)。京都会館をベースに活動し、花街では宮川町で大道具を担当する。「各花街みんな特色があり、規模も違う。特徴を出しつつ、優劣つけずいかにバランスをとるか。幕あいも短く、セットの簡略化にも腐心します」と前原和比古(56)がいう。合同公演の舞妓総踊りの背景は自信の作だ。この会社の狂言方(舞台監督)でもある。

 「簡略化した舞台で、どれだけ特徴をだすのか、芸・舞妓さんにはいい勉強になるのでは」と前原。縣は「合同公演は、一般の人が多く見に来られる。それぞれの芸にはもちろん、京都の花街全体にとって、刺激になる」という。

藤舎名生さん

 表舞台には出ず、裏で笛や鳴り物を担当する影囃子(かげばやし)も重要な役割。五花街の笛の師匠藤舎名生(66)は、公演の時には影で笛を吹く。「各花街の中でも、激しいライバル意識で芸の向上を競い合っておられる。それが一堂に会するのだから見ものです。お客さんも、この舞台でひいきの花街だけでなく、よその良さにも気がつくはずで、花街全体の活性化につながるいい試み」と合同公演を楽しみにする。

山崎博行さん

 前京都府知事荒巻禎一(75)は「京都を代表する文化として花街の芸・舞妓の芸も欠くことができない。なんとか支援の方法はないかと考えた」と、花街をバックアップする京都伝統伎芸振興財団が平成8(1996)年に設立された経緯を話す。同財団の愛称「おおきに財団」の名付け親。「いろいろ花街がむずかしくなっている時、お互い壁を作っていたらいかんのです。合同公演は、壁を低くするばかりか、互いの励みになっている。京都には五つの花街があることのデモンストレーションともなり、やってきてよかったと思う」と公演が十四回続いてきたことに感じ入る。

荒巻禎一さん

 平成6(1994)年の第1回から合同公演にかかわってきたのが同財団の専務理事山崎博行(57)。「振り返ってみると、いろいろ苦労もあった。だが、合同公演も含め、財団ができたことで花街の伝統芸能が認知され、芸・舞妓さんの芸も広く知られるようになってきたと思います」と活動を自負。「京都の花街には潜在能力があったんです。最近、若手の地方(じかた)さんが育ってくるなど、いい効果が出ている。これからも、ますます五花街に元気になってもらうよう、活動を続けたい」−支援に知恵をしぼろう、と思う。

 今年の合同公演は、16、17の両日とも午後2時、京都市左京区の京都会館で開演。京花街の奥深い伝統の芸が、咲き競う。(敬称略、「五花街合同公演」=おわり)

[京都新聞 2007年6月9日掲載]