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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

おこしやすの心 2 ガイドさん

歴史に文化、現代性 深み伝える

高薮律子さん

 京都観光の特色は、何度も繰り返し訪れる人(リピーター)が多いこと。京都市の平成18年の観光調査でも、これまで10回以上も来たという人が実に57・2%を占めた。これは増加傾向の外国人にも当てはまるようだ。この調査によると、京都の宿泊施設を利用した外国人は昨年80万3千人と、前年比10%増。円安のせいもあるが、京都の深い文化性が世界的人気になっている印象を受ける。

 「ニュースにはほとんど出ないですが、京都には外国の超有名な芸能人とか、お忍びで何度も来ている方が多い。それほど、外国人の間で京都の評価は高い」と話すのは、国家認定の英語通訳ガイド高薮律子。20年のキャリアを持ち、全日本通訳案内士連盟の理事を務める。

菅井悦子さん

 「有名な観光地はもちろん、京都の街中に日本文化の本物があふれています。これを伝承し、いらっしゃった方をもてなそうとする心意気も強く感じられます。それが数多いリピーターをつくる魅力でしょう」と高薮。

 「私は、目に見えるものはもちろん、京都に残る日本の特徴である精神性を大切にしていかないと、と思うんですよ」と、同じ理事の菅井悦子が言う。生まれも育ちも京都だが、外国人を案内し、つくづく実感した。「18年もよく同じところばかり案内して、飽きないねと言われます。でも、京都にはもてなしの文化があり、季節でも日々によっても刻々、景色や雰囲気も変化する。この深さが京都を案内する楽しみです」。

樋口純子さん

 京都のガイドといえば、定番はバスガイド。昔から、京都が好きでたまらない人たちがあこがれる職業。

 「勤めたバス会社には同期のバスガイドが40人ほどもいて…。観光バス優先の時代、交通渋滞もない時代。きちっとコースも決まっていました」と45年のガイド生活を振り返るのは、ガイド派遣の洛東ガイドクラブ樋口純子(63)。高校では放送部、歌も得意と、バスガイド必須の条件を備えていた。

 「私は、時代は変わっても、京都は、人と人との付き合いを大切にする、日本の正統な精神と文化を受け継ぐ心のふるさとやと、お客さんに言い続けてきました」と西陣生まれの自負が出る。「人気のはやり廃りはありますが、京都の街はどこにも、歴史が息づき、新しいものも絶えず生まれている。いつ、何回来ても興味は尽きない」と。

辻井直美さん

 同じガイドクラブの辻井直美(32)は「私の時代は、ほとんど修学旅行生対応でしたね。いかにバスの中で寝させないかが工夫のしどころ」と笑う。「最近は『体験コース』も増えました。名所以外にも、新旧さまざまな産業もあって、京都の案内は、飽きることがないです。それにしても、近所の何げないお寺がいかにすごいところか、また、世界的に有名な企業も多いと、この仕事について知りました。この驚きをお客さんに伝えたい」と目が輝く。

 増加一方の京都への観光客、ガイドの需要も急増。ボランティア活躍の場が広がる。

松井清さん

 全く無料ではないが、人生円熟の132人ものガイドが、1人年間100回も出動しているという実績を持つのが、京都SKY観光ガイド協会。高齢者の人材活用を目指し、15年前に設立された。

 「自分の職業で培った経験を、説明に盛り込めば、ひと味違うガイドができるんですよ。これが熟年ガイドの強み」と同会長の松井清(70)。元信用金庫の役員。金融マンの知識を生かす。「たとえば金閣寺。巨額の建築費をひねり出すために、足利義満がいかに中国貿易で錬金術を使ったか。また、応仁の乱の端緒をつくった日野冨子は、その中で、東西両陣営に戦費を貸してもうけていた。まさに日本における金融の元祖、という具合。金融の知識を使い、面白おかしく歴史を学んでもらうんです」と。採用され7年、3分に1回の笑いをとる京の語り部として、ガイド業が板に付いてきた。

春田正弘さん

 「京都でのガイドの仕事には、終わりがない」と、副会長の春田正弘(68)はいう。元大手の電器メーカーで海外事業を担当。松井と同期でガイド試験を受け採用された。「修学旅行生の何げない問いに教えられることもあります。お客さんにも、案内する社寺や施設にも満足してもらうまでには、道はまだまだ遠いが、社会への恩返しの気持ちで…」と、日々の精進を語る。

 増え続けるリピーターに、迎えるガイドの技術も日々磨かれる。こうして京都の観光は、さらに深みを増していく。(敬称略)

[京都新聞 2007年9月19日掲載]