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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

おこしやすの心 3 ホテル

歴史に文化、現代性 深み伝える

辻弘嗣さん

 年間5千万人近くの観光客が訪れる京都には、ホテルと名のつく宿泊施設が数多い。世界的知名度を誇るものから、ごく小規模なものまで、ランクも外観もスケールもさまざまに、入洛客を迎える。明治初年から、京都にはハイカラな欧風ホテルが存在し、その歴史は古い。現在、旅館業法でいう京都市内のホテル業数は、123軒(平成17年)を数える。

 市の調査によると、京都を訪れ宿泊する観光客のうち、実に7割以上がホテル利用者という。ホテルの得意とする世界共通のユニバース(普遍的)サービスが好まれているのか。あるいは、その中に、京都ならではのもてなしが盛り込まれているゆえなのか。

 「ホテルをオープンしたころ、お客さまが早朝、ロビーで時間を持て余されているんですよ。それなら、社員が一緒に、近くの御所を散歩してみたらと…。これが好評でしてね、本格的な企画として磨かれてきました」と話すのは、京都ブライトンホテル社長辻弘嗣(63)。少人数で御所や有名社寺、風流行事を特別に楽しむ、同ホテル独特の企画商品のことである。

清原當博さん

 ホテルマン生活は40年余り。京都生まれ。京都の老舗ホテルと東京営業を経験し、京都の料理旅館で支配人も務めた。内と外から京都ならではの「価値」を知る。「20年前の開業以来、文化発信するホテルを掲げ、歴史、文化すべてが本物に浸れる『京都』のサービスを心がけました。また、客室183室という規模が、時代の要請に合っているのではないでしょうか」と辻。「一期一会を念頭におもてなしする。そうすれば必ず、また来ていただける」と確信する。

 「120年の間に京都のホテルとして培われてきた個人へのおもてなしのノウハウは、最高のものがある」というのは、京都ホテルオークラの総支配人清原當博(58)。ホテルでの仕事は東京で30年、京都に来て6年がたった。

石原哲也さん

 「明治21年にさかのぼる老舗ホテルのルーツ。それに、京都には、歴史に磨かれた文化と自然にはぐくまれた世界有数のもてなしのツールがある。お客さまをお迎えするのには、最高のステージです」と清原。「これに、グループがもつ国際標準のVIP層をもてなす接遇技術が、最近うまく融合してきたと思うんですよ」と、6年前に比べ、外国人利用者が3倍にもなった例をあげて話す。

 「京都の持っているほんものを大切にしたい。京都あってのホテルです。まず、京都の自然や文化の魅力を高めることこそが肝心」とウェスティン都ホテル京都の総支配人石原哲也はいう。外資系のホテルマンとして海外生活は9年。やはり都ホテルの120年近い歴史と格式を誇る由来を体感し、伝統のすばらしさ、大切さを、あらためて知る。「時代は変わっているが、これまで継承されてきた京都の文化の本質を、変えてはならないと思います。この志さえあれば、さらに魅力は高まり、世界中から京都に来てもらえる」と。

奥野源太郎さん

 昨年春に着任。「京都のイメージを取り入れるヒントに、京都市内の辻々をもっと歩きたい」というのはリーガロイヤルホテル京都の総支配人奥野源太郎(62)。「お客様の25%が外国人です。京都のホテルですし、和の雰囲気を出したいですから」と話す。和風浴室には木製の手おけ。9、8階の廊下のじゅうたんは石畳、7階ではお茶のイメージと工夫をこらす。「それ以上に心がけるべきは人品・人格の向上。京都の老舗旅館のようなきめ細かな気配りなど、ホテル全体でレベルアップを図りたい」。

木部義人さん

 京都駅に立地するホテルグランヴィア京都は、今年開業10年を迎えた。「1200年の歴史をもつ都、100万人を超える大都市、最先端の産業都市でもあり、宗教、学術都市。こんな街はほかにありません。ここでサービスできるなんて、本当に誇りです」と社長の木部義人(66)は感に堪えない。「鉄道屋からホテルマン」に。大阪と京都で10年が過ぎた。

 「ホテルの核心は何といっても、人が担うソフト。そこに、京都らしさを出したい」と木部。「すみずみまで行きわたったもてなしの精神です。京都の知識をきちんと持ったサービスを確立し、日常では味わえない、よろこびと感動のステージを京都でご用意したい」と力が入る。

 過去と今、伝統と先端が共存する京都。このたぐいまれな都市の魅力をどこからのだれでもが楽しめ、違和感なくくつろげる空間を−。京のホテルの試みは、明日も続く。(敬称略)

[京都新聞 2007年9月20日掲載]