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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

第3部 問われる宿泊

【4】 巨人の存在感 ホテルの枠超え企画探る

神職と特別プランの打ち合わせをするホテルグランヴィア京都のスタッフら(京都市北区・上賀茂神社)

 秋深まる京都市北区の上賀茂神社境内。JR西日本グループのホテルグランヴィア京都宿泊企画担当支配人、高岡史明さん(37)が、濃紺のスーツ姿で神職に熱い思いを訴えた。「お客さまは京都と縁を結ぶことを望んでいます」。来年の開業10周年に向けて、宿泊客が境内に桜を植樹する特別プランの調整が続く。同神社境内に観光客が植樹するのは初の試みだ。

 同ホテルは、京都の玄関口「京都駅ビル内」という好立地を生かして、宿泊客が増え続ける。2006年10月には、客室平均単価を前年同月比で千円以上値上げしたが、逆に客室稼働率は同3・7%増の98・1%に上昇。京都新聞社の京都主要ホテル調査でも、同月稼働率は最高となるなど歴史の浅いホテルながら存在感は増している。

 観光客からの評価を背景に市内の寺社や老舗との結び付きも強まる。上賀茂神社では昨年五月から非公開神事を同ホテル宿泊客に対し公開。「価値が理解できる観光客を連れてきてもらえ、文化発信の場ともなれる」と同神社権禰宜(ごんねぎ)、村松晃男さんは信頼を寄せる。

 ホテルグランヴィア京都を率いる社長の木部義人さん(65)は「ホテルで源氏物語を講義した後ゆかりの地を巡るなど、従来の話題性重視の企画から文化を伝える体験型へのシフトが必要」と宿泊の枠を超えた取り組みも探る。

 その木部さんが「負けられない」と意識するのがJR東海だ。有名寺社の写真とキャッチコピーで旅情を誘う同社の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンは絶大な影響力を誇る。取り上げられた寺社には観光客が殺到、「ぜひうちを採用してほしい」という陳情もあるほど。京都駅の東海道新幹線利用客数も1日当たり05年度は31000人となり、キャンペーンを始めた1993年度から5千人も増加している。

 営業力強化のため、2003年には南区に「京都・奈良・近江文化情報事務局」を開設。新幹線という強力な輸送力をバックに老舗料亭などと連携して多彩な宿泊プランを展開する。JR東海営業本部担当部長の中田邦彦さん(51)は「JR西日本グループとは競合しない」と受け流すが、「JRの敵はJR」という構図が相乗効果を生んでいる。

 京都市観光調査年報によると2000年以降、観光客の交通手段は「JR」が首位をキープする。ホテルグランヴィア京都は線路が玄関先まで延びる好立地。駅ビルの中にはデパート、劇場からふかひれ料理で有名な高級レストランや健康診断が受けられる診療所まである。開業前には「駅に泊まりたい観光客は少ない」と楽観視していた市内のライバルホテルからも「増えたパイをすべて持って行かれているのではないか」とやっかみ半分の声が聞こえる。

 厳しい顧客争奪戦を制してオープンから10年足らずで京都のリーディングホテルに成長したホテルグランヴィア京都。その突出した存在は、京都のホテルの課題と可能性を浮き彫りにしている。

【京都主要ホテル調査より】宿泊客出発地最多地域 関東 調査した10ホテルすべてが関東からの宿泊客が主力と答え、主に東海道新幹線で京都を訪れる観光客が宿泊客の中心となっている現状を確認できた。京都市観光調査年報によれば、市内を訪れる観光客のうち関東14.6%。中国・四国・九州は9.8%となっていることから、今後、西日本からの宿泊客取り込みも各ホテルの課題となりそうだ。

[京都新聞夕刊 2006年11月24日掲載]