ベテランたち(2) 神戸製鋼ラグビー部・北川有広(30)


「何度も冷却期間があったから長くプレーできた」 曲折を経て「極めたい」

「小さいから技術で勝つというより、真っ向勝負したい」と北川。入念にストレッチを繰り返す(神戸市・神戸製鋼灘浜グラウンド)

 一度はジャージーを脱いでいる。  社会人ラグビー「トップリーグ」のNECを3年前に現役引退し、母校である立命大の職員としてコーチになった。だが昨夏、神戸製鋼の一員として再びグラウンドに戻ってきた。すっかりトップ選手の体形に戻り、55センチの首回りは女性のウエスト並み、70センチの太ももはスケート選手クラスだ。「体、でかくなったでしょ」と屈託なく笑う。

 スクラムを最前線で押し込むプロップの定位置を若手と争う。経験と技術が詰まったスクラムはベテランの腕の見せどころだ。復帰2年目の今季も公式戦の出番はまだない。選手としての残り時間が少ないのも分かっているが、「他人と競争しているわけではない。目指すのは自分の100点」。こつこつと取り組む。

 コーチに没頭していた昨夏。神戸製鋼の関係者から「プロップに故障者が相次いで困っている。来ないか」と誘われた。NEC時代、何度も戦った神戸製鋼のレベルの高さは肌で知っていた。悩むうちに、まだ体力の限界とは思っていない自分に気づいた。コーチとして客観的にラグビーを見渡し、未開拓だった自分の可能性も感じた。安定した大学職員を辞め、1年ごとの契約選手として再びジャージーを着た。

 競技一筋のエリート選手とは違い、逆風に立ち向かって成長してきた自負がある。大学受験に失敗した時は、実家の生花店を手伝いながら勉強を続けた。競技をあきらめトラック運転手として就職したこともある。NEC入社も夏合宿で後輩を見にきたスカウトに猛アピールした成果だった。  「道のないところに行く方が力を発揮できるタイプ。浪人したり、コーチになったり。途中で何度も冷却期間があったから長くプレーできたのかも」。何度も曲折し、たどりついた29歳の復帰だった。

 かつてはスクラムに固執し、目の前にいる相手を倒すことに燃えた。でも今は敵味方30人の動きを想像しながら、自分の仕事を計算できる。「スクラムを極めたいと思っていたけど、今はプロップのすべてを極めたい。何年やってもラグビーが全然分からない」。だから面白い、と続けた。

 身長174センチと小柄だが、そのハンディをバネにしてベンチプレス180キロを挙げるチーム一の「怪力」に肉体改造した。「自分はできると思うこと。それが通用するかどうかの答えだ思う」。そう信じている。



 きたがわ・ありひろ 大阪市旭区出身。茨田高から立命大へ進み、4年時には主将。2000年にNEC入社し、4年間在籍した。04年5月から立命大でコーチを務め、05年10月から神戸製鋼で復帰。174センチ、100キロ。

2006年11月14日