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校舎の新築
背景に公共事業重視

大野町長の肝いりで改築された日栄小。併設の保育園、デイサービスセンターと合わせて14億円が投じられた(滋賀県豊郷町)

 豊郷小校舎の解体改築計画を進めた大野和三郎町長が文部科学省に出向いた後、一転、保存方針を打ち出したのは昨年12月24日だった。

 解体を阻もうと教室に立てこもっていた住民らは知らせに喜びを爆発させた。が、数時間後、事態は再び一転した。

 「同じ敷地に新校舎を建てる」。大野町長の新たな意向が伝わって、住民の1人はあきれ顔で「そこまでして建てたいのか」と吐き捨てた。

 町長は校舎の新築にこだわり、住民らは現校舎の保存再生を求めた。平行線は、ついにリコール投票での決着となった。争点には、校舎の保存方法に、新築の是非も加わった。

 解職派の住民らが訴える校舎改修に比べ、新築には多額の費用が必要とされる。町長が新築に固執する背景には公共事業によってもたらされる地域活性化の狙いがある、と指摘する声も。

 県内の建設業関係者の1人は一般論として「学校建設は多少豪華にしても住民の批判を受けにくい。業者にとってもうまみがある」「道路工事などと違って、内装や空調などさまざまな業者が潤う」とも。

 豊郷町は田園地帯の湖東平野の真ん中にある。面積約7.8平方キロは県内の自治体で最小。新幹線と近江鉄道が走って町域は分断されている。大規模工場などの誘致は難しく、農業以外に目立った産業はない。人口も減少傾向だ。

 ここ数年ベースでは歳入に占める自主財源は約3分の1。国や県の交付税や補助金に頼ってまちづくりを進めてきた。大野町長は「中央との太いパイプ」を強調し、公約に掲げた公共事業を積極的に進めてきた。

 3年前、大野町政が始まって以来、下水道普及率は51%から93%にアップした。町道拡幅も進む。町内2小学校のうち日栄小は昨年5月に改築された。

 普通会計の建設事業費で見ると、年平均で前町長時代の約2倍、約12億2000万円にもなっている。

 今年1月、町長後援会主催の新年会があった。リコール投票確定後だったが、地元選出の自民党国会議員3人や県議ら約700人が出席し、まちづくりにまい進してきた大野町政をたたえた。

 町民の評価はさまざま。「生活関連の整備が進み、まちが住みやすくなった」(会社員66歳)とする声がある一方で、公共事業にシフトした町政への批判も根強い。

 解職派の高橋直子町議は「住民不在のワンマン町政の象徴が豊郷小改築問題だ」と追及する。

 大野町長は、校舎新築問題を近隣1市2町と進める合併問題とも関連づける。

 「児童がいっそう減少すれば、合併後に建設予算がつく保証があるのか」と。解職派住民らは「合併前の駆け込みではないか」と批判する。

<豊郷小学校>
 米国出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計。1937(昭和12)年に完成した鉄筋コンクリート建築。豊郷町出身の実業家古川鉄治郎氏(故人)の私財で建設され、当時「東洋一の教育の殿堂」といわれた。大津地裁が校舎解体工事差し止め仮処分を決定したが、昨年12月20日、町長指示で窓枠などが撤去され、混乱した。

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