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「小説を書くことが私の命」 寂聴さん“最後の”長編小説語る

3年ぶりの長編小説を手に笑顔を見せる瀬戸内寂聴さん(京都市右京区・寂庵)
3年ぶりの長編小説を手に笑顔を見せる瀬戸内寂聴さん(京都市右京区・寂庵)

 作家の瀬戸内寂聴さん(95)が3年ぶりとなる長編小説「いのち」の出版を前に29日、「寂庵」(京都市右京区)で記者会見した。「小説を書くことが私の命」と語る瀬戸内さんが、“最後の長編小説”の表題として選んだのが「いのち」だ。今は亡き実在の人物の晩年と、自身の老いをつぶさに見つめ、人間味あふれる命のありようを、渾身(こんしん)の力で書き切った。

 物語は、腰部の圧迫骨折で入院していた時に見つかった胆のうがん手術を終えて寂庵へ帰る場面から始まる。完治しない腰の痛みに苦しみ、「老いぼけてしまう」ことを恐れる。そんな92歳のころの心境を隠さずつづる。

 物語の運びが一気に加速するのは、瀬戸内さんが親しくしていた作家の河野多恵子さんと大庭みな子さんが登場してからだ。「二人とも日本文学史に必ず残る才能豊かな作家。何でも書いておくことが後の研究活動に役立つと思った」と語る。

 異常性愛やマゾヒズムの世界を描いた河野さんの夫婦生活の実態。夫による絶対的な献身によって執筆活動が支えられていた大庭さんの晩年の本心…。芸術に対する壮絶な思いや、文壇における立場を巡っての駆け引き、文化勲章受章の願いなど、思いのままに生きる姿が描かれ、圧倒される。

 二人の関係性は「本当にライバル」で、それぞれが生前、瀬戸内さんに本音を語っていた。鮮明な記憶をもとに執筆し「フィクションはない。会話はそのまま」という。書き終えた今、思う。「二人の命はただ事ではない。私も含めて、良い妻、良い母ではなかった。でも何でもいいんじゃない? 与えられた命を精いっぱい生きることに意味があるんじゃないかしら」

 幼い娘を置いて出奔し、京都で作家人生を始めて約70年。けがや病気を乗り越えて、新たな代表作を書いた瀬戸内さん。生まれ変わっても「女の小説家でありたい」と願う。

 「小説とは、精神が伴った仕事で、特別なものだと思います。時には心が傷つくこともあるが、それでも書かなきゃならない。そんな小説家が本当に好き。そしてやっぱり女がいい。男より複雑で、何倍も深く一生を送れるんじゃないかな」

 「いのち」(講談社)は1日刊行。1512円。

【 2017年12月02日 17時30分 】

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