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桑原蔵書廃棄が問うもの 古書店主「行き場なき現状に危機」

「書物を巡る現状に目を向けてほしい」と話す古書店「書砦・梁山泊」の島元さん(京都市下京区)
「書物を巡る現状に目を向けてほしい」と話す古書店「書砦・梁山泊」の島元さん(京都市下京区)

 フランス文学者の故桑原武夫氏の蔵書約1万冊を京都市の図書館職員が無断で廃棄した問題について、社会・人文系の古書店「書砦(さい)・梁山泊(りょうざんはく)」(下京区寺町通松原上ル)店主、島元健作さん(72)が「破棄した職員だけが厳しく処分され、一人やり玉に挙げられた形になったが、満杯に近い状態で本の受け入れが難しい図書館の現状にこそ目を向けるべき」と訴える冊子をつくった。古書業界の立場から書物文化の危機に警鐘を鳴らしている。

 島元さんは府古書籍商業協同組合の代表理事を務める。冊子は、破棄問題が4月に明らかになり、6月にキャンパスプラザ京都(下京区)であった古典籍の研究者らでつくる研究会で講演した内容をまとめた。

 島元さんは、大学図書館を含む多くの図書館が手狭になり、著名な学者の寄贈書ですら受け入れが難しい状況に触れた上で「桑原蔵書の寄贈先は大学図書館ではなく、市民向けに広く新刊書も揃える市の図書館なので段ボール400個分の保管は相当な負担だったはず」とする。

 破棄した職員に対し、市教委は減給6カ月の懲戒処分と、部長級から課長補佐級に降任した。「遺族に無断で破棄したことは問題だが、報道も職員一人を責めて終わった感がある。桑原氏のような教養人は幅広い分野の蔵書だったはずで、もともと図書館にある蔵書と重なる本も多かっただろう。破棄はある意味で、職務として図書館の機能を考えた結果とも言える」と一定の理解を示す。

 研究者だけでなく、戦後の活字文化に親しんだ団塊の世代の蔵書家たちが今、高齢化を迎え、多くの書物が失われているという。

 蔵書家や、その遺族が図書館に引き取ってもらおうとしても難しいことが多いため「散逸はやむを得ない」と古書店に売る。

 しかし、若い層の本離れもあって「以前ほど売れない時代。値段を付けられない本が増えている」。価格の付かない本は古書店が古紙回収業者に処分してもらう。「廃棄せざるをえない本は業界で『つぶし』と言われるが、京都の古書店分だけでも年間で数万冊に及ぶだろう」と明かす。

 「どの本も持ち主には思い入れが詰まっているだけに、いつも苦渋の思いで処分している。書物をどう活用し、受け継いでいくか。桑原蔵書破棄問題を機に考えるきっかけにしたい」

【 2017年12月11日 16時29分 】

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