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音楽家として本当に伝えたいこと 京響のLGBT奏者に聞く

「議論を尽くして、それでも来てほしいと話がまとまった時は、喜んで川本町に行きたい」と話すイデアラさん(京都市中京区・京都新聞社)
「議論を尽くして、それでも来てほしいと話がまとまった時は、喜んで川本町に行きたい」と話すイデアラさん(京都市中京区・京都新聞社)

 京都市交響楽団のコントラバス奏者でLGBT(性的少数者)のジュビレーヌ・イデアラ(本名・出原修司)さんが出演し、島根県川本町で9日に開催予定だった演奏会が、案内ポスターの文言を巡る騒動から中止された。「音楽で町おこしを」という地元の思いに応え、今年3月で廃線となったJR三江線と川本町に取材し、イデアラさんが作曲した楽曲を当日に披露する予定だった。「おネエ系」という文言の賛否を超えて、ひとりのクラシック音楽の演奏家として本当に伝えたいことを、京都新聞の単独インタビューに語った。

■「LGBTが問題ではない」

―今回の演奏会が中止に至った騒動を、どのように捉えているか。

 楽しみにして下さっていた方々に、申し訳ない気持ちでいっぱい。演奏会の中止は、LGBTが問題ではないと考えている。企画の発案から準備までに十分な時間をかけることができず、私の音楽性について十分に知ってもらうことができていなかった。

 地方にも良い音楽ホールはあるが、何をやっていいか分からない、どうすればいいか分からないという課題が少なくない。演奏会を企画するプランナーや関係する自治体が、じっくりと時間をかけて考えるプロセスが重要だ。川本町は3月にJR三江線が廃線となり「何か手を打って、人を集めなければ」という焦りがあったのかなとも思う。それが原因で直前で混乱を招いた。「おネエ系」というポスターの表現をめぐる議論がきっかけではあったが、問題の中心はそこではない。町のため、聴衆のためにどのような公演を行えばいいか、どんな演奏家を招けばいいか。みんなでじっくりと考え、同じ方向へと進んでいくことが大切だが、今回はそのプロセスが不十分だった。

■それでも、また新しいことがある

―新曲「鉄橋と彩雲と、ぼく。」に、どのような思いを込めたか。

 JR三江線の最後の日の3月31日に、カメラを手に列車に乗った。沿線の江の川の流れが、青というか緑というか本当に美しく、曲のメロディや雰囲気はすぐに浮かんだ。けれど、6月の演奏会の時、この曲を披露する時は鉄道は走ってないんだな、ということがものすごく切なく感じた。鉄道を作った人たち、列車に乗って学校や仕事に通った人たちの思いを曲に乗せたいと思った。

 曲に合わせて沿線の景色を撮影した動画を編集し、1カ月ほど悩んで作った詩を添えた。鉄道はなくなったけれども、これからどんどん新しいことがあって、町はまたにぎわっていく。そのとっかかりとして、私が曲を演奏するから、みんなで元気出していこうよ、という気持ちで作り上げた。

 だから中止という判断はすごく悲しいし、この曲を演奏したい気持ちはある。ただ、そのためには、それなりの準備が必要だろうと思う。私が行くことで混乱が起きるような状態で演奏会を開くのは、好ましくない。少し時間をおいて、十分な議論を尽くして、それでも「ジュビちゃん、来てほしいね」と話がまとまった時には、喜んで川本町に行きたいと思います。

【 2018年06月08日 23時04分 】

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