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訪日客「宿泊税払いたくない」 京都、施設側の負担じわり

フロントで宿泊税について説明を受ける外国人観光客(右)=京都市左京区
フロントで宿泊税について説明を受ける外国人観光客(右)=京都市左京区

「宿泊税なんて聞いていない。払いたくない」。京都市東山区のゲストハウスで働く今宮佑季さん(32)は今月2日、宿泊予定の外国人観光客の男性にそう言われ、言葉に詰まった。

 男性は説得に応じないため、今宮さんは泣く泣く税を肩代わりする方針という。

 中京区でホステルを経営する今井直人さん(44)も、外国人観光客の女性に宿泊税についてとがめられた。女性は延泊を検討していたが、宿泊料金が1泊1万円未満の場合には宿泊税がかからない大阪府のホテルに行くと言い残して去っていった。

 市が今月1日に導入した宿泊税は、全国で初めて民泊やゲストハウスを含む全ての宿泊施設の利用者を課税対象とした。施設側が利用者から徴収し、市に納入する「特別徴収制度」のため、施設側は利用者の宿泊料金と人数に応じた額を原則、毎月市に納めなければならない。だが、予約サイトを通じて全額支払い済みと思っている外国人が多く、追加徴収がトラブルの原因になることが少なくない。

 宿泊料金が2万円未満の税額は一律200円。安価な施設ほど税の負担感は大きくなる。旅館業法に基づく市内の簡易宿所は2014年度に460カ所だったが、今年8月末には2627カ所に急増し、生き残りをかけた値引き競争が過熱している。中にはオフシーズンの宿泊料金を1泊千円に設定する施設もあり、「価格破壊」が起きている。

 今宮さんは「うちは1泊2千円を切ることもあり、200円の税額は負担が大きすぎる。支払いを拒否する人が増えれば経営にも影響を及ぼしかねない」と懸念する。市内の簡易宿所でつくる「京都簡易宿所連盟」(下京区)は、宿泊税の見直しを市に求めるための署名活動を始めた。

 旅館業法などに基づく許可を受けずに営業する「ヤミ民泊」の存在も宿泊税の徴収に暗い影を落とす。

 市によると、市内のヤミ民泊は、6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)で市の取り締まり権限が強化されたこともあり、約3千件から数百件に減少した。だが、市内の全宿泊施設約3千件のうち税逃れをしているヤミ民泊が数百件あると考えれば、その割合は決して小さくない。

 市は京都府警とも連携して適正化に全力を挙げるが、市内のマンションの一室でヤミ民泊を営む40代男性は「宿泊税を払えば市にヤミ民泊の存在がばれる。これからも払うつもりはない」と意に介さない。

 宿泊税の税収は本年度19億円、2019年度以降は年間45億6千万円に上る見通し。見込み額は、16年の市観光総合調査で算出した延べ宿泊人数2150万人を根拠にしているが、17年は2444万人に増えている。「仮にヤミ民泊の全利用者から徴収できなくても税収見込みを下回ることはない」(税制課)とするが、ヤミ民泊の利用者から税を取れなければ、不公平感が生じ、制度の信頼性を損ねる。

 徴収対象となる観光客がこのまま増え続けるかどうかも不透明だ。京都大の岡田知弘教授(地域経済学)は「観光産業は景気や災害に左右されやすく、税収は不安定だ。市は過度に頼るべきではない」と警鐘を鳴らす。

     ◇

 <連載 まち異変 お宿バブルその1>外国人観光客が急増する京都の宿泊業界で異変が起きている。まちにホテルやゲストハウスがひしめき合い、すでに「バブル状態」との指摘が強まっている。一方で、ヤミ民泊や交通渋滞などによる「観光公害」も深刻化している。国際観光都市の今を見つめ、課題を追う。

【 2018年10月22日 17時00分 】

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