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京都の近代建築解体相次ぐ 不動産開発あおりで文化財の消失加速

全面建て替えが計画されている「致遠館」。大正期のヴォーリズ建築とされる(京都市上京区・同志社大)
全面建て替えが計画されている「致遠館」。大正期のヴォーリズ建築とされる(京都市上京区・同志社大)

 明治時代から戦前までに造られた「近代建築」を巡り、国の登録有形文化財になった建物を京都市内で登録抹消し、解体するケースが出始めている。近代建築の宝庫とされる京都では不動産開発が相次ぐ。明治・大正期の建物を巡り、老朽化や維持改修負担を理由に、建物解体を検討するのは、学校法人同志社(京都市上京区)にとどまらず、消失の流れが加速しつつある。

 京都市が2005、06年にまとめた調査報告書によると、市内の近代建築は1749件を数える。横浜市や神戸市をしのぎ、「数から言っても他都市に比べて突出して多い」。震災や第2次世界大戦の被害も少なく、戦後も大規模な再開発はなかったため、学校や公共建築に限られず、商業ビル、住宅、商店など、明治から大正、戦前までの各年代の多種多様な建物がそろっているという。

 うち、将来の指定文化財候補ともなる登録有形文化財は、18年11月時点で過去最高の425件に達する。だが、17年9月、「平楽寺書店」店舗(中京区)が文化財登録を市内で初めて抹消されたのをはじめ、若林佛具店(下京区)、同志社フレンドピースハウス(上京区)の少なくとも3件の解体が明らかになっている。「ほかにも相談に来ている案件がある」(市文化財保護課)といい、近代建築の消失は加速しそうだ。

 登録有形文化財制度の限界を指摘する声もある。

 近代建築が社会的な評価を受けることなく消失するのを防ぐ制度のため、国宝や重要文化財といった「指定文化財」が厳しい規制と手厚い保護を行うのに対し、緩やかな措置を講じる。建物の外観を保てば内部を自由に使える一方、維持修復の補助は限られ、所有者は届け出によって登録を抹消し、建物を解体できる。市内で相次ぐホテルやマンション計画に伴い建て替えが浮上しても、行政は「『なんとか残せませんか』とお願いすることしかできない」(府内の文化財行政担当職員)。

 京都工芸繊維大の笠原一人助教は「現在の文化財保護制度では、近代建築の解体に歯止めを掛けられない。国は文化財活用を旗振りする以上、登録有形文化財に関する相続税猶予などの税制優遇も講じてほしい。自治体の役割も大きく、地域で保存活用を図る人材の育成や解体1年前までの事前届け出を義務化した京都市の京町家条例のような歯止め策を検討してほしい」と危機感を募らせる。

 ■同志社「赤レンガへ思い強いが」苦渋決断

 所有者側は、老朽化や耐震への不安、維持や改修に掛かる費用負担の重さに悩まされているという。

 同志社が改築を計画している同志社大今出川キャンパス(上京区)の大正期のレンガ建物「致遠館」。同志社は「赤レンガ建物への思い入れはどこよりも強い」と、外観を残した耐震改修を当初検討した。

 学生の利用は少ない大学事務棟のため、改修を後回しにしてきたが、手狭な上、床やロッカーが傾き、これ以上放置できないと判断。だが、レンガに穴を開けてワイヤを通す工法はレンガが割れる危険があり、資金面に限りもあるという。「建物はヴォーリズ建築のデザインを極力保って建て替え、館名も変えない」と理解を求める。

 近代建築は築100年以上を経たものが増え、古代や中近世の建物とともに、京の景観をなす。ただ、その所有者は同志社のような大規模な組織だけでなく、中小規模の学校や企業、個人も多く、維持管理の悩みに直面しているという。同志社の関係者はいう。

 「同志社の規模であっても、建物の維持管理や費用に四苦八苦している。平成がまもなく終わり明治が遠のく中、老朽化や耐震性の悩みはますます深刻になってゆく。解体を含めた難しい判断を迫られる所有者も増えるだろう」

【 2019年01月21日 10時32分 】

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