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集落への災い侵入防ぐ伝統行事 京都・宮津の「蛇綱」

大蛇の口に頭を差し出して、無病息災を祈る住民(宮津市今福)
大蛇の口に頭を差し出して、無病息災を祈る住民(宮津市今福)

 集落に響くホラ貝の音とともに、わらでできた大きな蛇が赤ちゃんからお年寄りまで一人一人の頭を次々とかんでいく。京都府宮津市南部の今福地区に伝わる「蛇綱」は毎年1月19日に営まれ、住民の無病息災や五穀豊穣(ほうじょう)を祈る伝統行事だ。江戸時代に疫病が流行した際、村の入り口にわらで作った大蛇を飾って病を鎮めたのが始まりとされる。

 かつては地域の若手による行事だったが、太平洋戦争で一時中断した。1980(昭和55)年に復活し、現在は同地区のお年寄りでつくる「今福福寿会」のメンバーが中心となって催している。

 柔らかく強度が高いという同地区で育てられたもち米のわらを手作業で編み込み、全長約6メートル、重さ約40キロの「ヘビ」に半日かけて仕上げる。蛇綱作りに20年近く携わる奥野和生さん(82)は「作業は大変でも、みんなが幸せになってもらうためにしっかり作る」と話す。

 今年も住民たちにかつがれた蛇綱が地区内の約30世帯を訪問し、御利益を得ようという人々をかんで回った。8カ月の長男一翔ちゃんと初めて参加した寺田亜由美さん(38)は「今年一年、家族みんなが健やかに過ごせそうです」と喜んだ。

 蛇綱は集落を一巡した後、地域の安全を一年間見守るため、地区内の荒木神社の境内に立つイチョウの木に巻き付けられた。

 府立丹後郷土資料館(同市国分)によると、蛇綱は集落に災いの侵入を防ぐ「道切り」と呼ばれる習わしの一つ。同様の行事は宮津市や伊根町など丹後一円で行われていたが、少子高齢化が壁となり、今日も続けている地域は少ないという。民俗学を研究している青江智洋学芸員(38)は「ヘビに頭をかんでもらい無病息災を祈るという内容は珍しく、蛇綱の形やデザインも興味深い」と説明する。

 行事を終え、同福寿会長の福井愿則さん(80)は「今年も地域の皆さんが幸せに暮らせるように行うことができた」と、ほっとした表情を見せ「元気の源である蛇綱を今後も絶やすことなく続けたい」

【 2019年02月09日 21時41分 】

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