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「共助」阻む過疎高齢化、増える「限界集落」 西日本豪雨の爪痕

古道を再生した避難路を歩くアクトスターのメンバーたち。「集落を次は誰が守るか。それだけが心配」(綾部市星原町)
古道を再生した避難路を歩くアクトスターのメンバーたち。「集落を次は誰が守るか。それだけが心配」(綾部市星原町)

 真新しい砂利道を68~76歳の男性4人が点検する。生活道が土砂崩れで通行できなくなった時に備え、住民たちで古道を再生した避難路だ。「西日本豪雨のあと、みんなで『やろう』となった」。今井逸郎さん(76)は9月から2カ月がかりの作業を振り返る。

 京都府綾部市星原町。山に囲まれた30世帯66人の小集落は昨年7月、豪雨に襲われた。各地から吹き出した谷水で民家や作業場計9軒が浸水。土砂崩れで生活道も3カ所寸断され、車での脱出が困難になった。集落奥では250メートル以上にわたり土石流が発生し、田畑を埋めた。

 星原町は住民の半数33人が65歳以上の高齢者。今井さんらは4年前、住民有志で地域づくりグループ「アクトスター」を結成し、活性化に取り組んできた。豪雨後のこの1年は防災に力を注ぎ、避難路整備や専門家を交えた避難マップ作りと、住民同士が助け合って避難する「共助」の仕組みを形にしてきた。

 ただ、気がかりもある。アクトスターのメンバーは現在7人。うち6人は60代後半~70代で「若手」は40代1人しかいない。今井さんは「うまくバトンタッチせんと、10年後が心配」と危惧する。

 京都府内では北部を中心に過疎化、高齢化が進み、高齢者が住民の半数以上を占める「限界集落」が急増している。統計で最新の2015年には360集落と5年前から倍増。府は来年には526集落に増えると推計する。

 4世帯6人が暮らす福知山市夜久野町板生の田谷地区。山と田畑に囲まれたのどかな集落だが、家々の間を流れる小川で護岸が至る所で崩れるなど、豪雨や台風の傷跡が残っている。田谷自治会長の松山房子さん(75)は「最近は裏山から大量の水と土砂が押し寄せることが増え、雨の夜は寝るのも怖い」と不安がる。

 集落は全域が土砂災害警戒区域に指定されており、市危機管理室によれば、鉄砲水などの被害が起こりやすい地形だ。早急な自主防災の取り組みが求められるが、住民の大半は70~80代で車を運転できない人もおり、6キロ先の避難所に移動するにも課題がある。

 市危機管理室は7月中にも住民と今後の対応を話し合う予定だが、担当者は「組織的な共助は難しく、早めの広域避難所への避難や、上階への避難を呼び掛けるぐらいしか対策が思いつかない」と頭を抱える。

 夏の訪れとともに、じめっとした空気がまとわりつく。集落を眺めながら松山さんはつぶやく。「豪雨や台風のたびに遠い避難所まで行くわけにもいかない。愛着ある土地を離れるのにも抵抗がある。どうしたらいいものか」

    ◇     ◇     ◇

 関連死を含め全国で275人の犠牲者を出した西日本豪雨。京都府内では5人が亡くなった。「あの日」から1年、府北部の被災地を歩き、今もなお残る「爪痕」を見つめる。=全3回のうちの2

【 2019年07月11日 16時20分 】

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