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「アニメに描かれ自分のまちが好きに」 京アニ、聖地の人の思い

「秀一パン」とも呼ばれるフランクデニッシュを手にする中路さん。店内にはファンから贈られたという絵が多数飾られている(同市五ケ庄)
「秀一パン」とも呼ばれるフランクデニッシュを手にする中路さん。店内にはファンから贈られたという絵が多数飾られている(同市五ケ庄)

 京都市伏見区の「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオの放火殺人事件から18日で1カ月。同社の本社がある宇治市を舞台にした作品「響け!ユーフォニアム」には、実際の町並みや風景が随所に登場する。「聖地」を目指して国内外から多くのファンが宇治を訪れ、新たな交流も生んできた。各所を巡って、京アニや作品、事件への思いを聞いた。

 「響け!―」は吹奏楽に打ち込む部員らの日常や友情を描いた青春アニメ。大吉山(仏徳山、同市宇治)は主人公と友人が県祭(あがたまつり)(6月5日)の夜に登り、象徴的な場面として描かれる。同市は県祭の日にキャラクターのパネルを大吉山に設けており、今年は800人以上が訪れた人気スポットだ。

 登山道の入り口ですれ違った中国人の男性(23)は「昔から京アニのファンなので事件は本当に恐ろしく、つらい。現場に行って献花したい」と話した。

 歩いて15分ほどで展望台へ。あずまやのベンチに腰を下ろしていた20代の男女は、神奈川県から来たという。「大吉山の景色は『響け!―』そのまま。でも、描いた人たちが事件に巻き込まれたと思うと残念でならない」。主人公がたびたび腰掛ける通称「久美子ベンチ」などがある宇治川沿いを散策し、追悼のため現場に向かうという。

 作品には実際の商品や店舗とされる描写も多い。「店構えやパンが忠実に描かれていてうれしかった」と振り返るのは、京阪黄檗駅(同市五ケ庄)近くのパン屋「中路ベーカリー」の店主中路義弘さん(63)。

 登場人物が食べていることから、ファンから「秀一パン」とも呼ばれるフランクデニッシュは、放送後に400本売れた日も。店先には声優のサインが入った作品のポスター、店内にはファンから贈られたキャラクターの似顔絵などが飾られている。「ファンはとても礼儀正しく、これまで接点のなかった人たちとの交流は新鮮で楽しい」

 京アニの社員も時々買いに来ていたといい、「特別なことをすると逆につらくなる。日常をしっかりと送ることで京アニを支援したい」と、中路さんは語る。

 作品に手土産として出てくる栗まんじゅう。モデルとされる和菓子を販売するのが、京阪三室戸駅(同市莵道)近くの「幸栄堂 三室戸店」だ。

 国内外からファンが訪れる店内には作品のサントラが流れ、ファンが描いた絵がひしめく。店員の大谷内(おおやち)奈々さん(43)は「もともとアニメ好きだったが、子育てで忙しくなり、しばらく離れていた。アニメを再び見るきっかけになった『響け!―』には宇治がたくさん描かれ、自分のまちをもっと好きになった」。

 事件後は千羽鶴を店内で折れるようにした。「地方なのに作品を一貫して仕上げる京アニは、奇跡みたいな会社だとファンも言っていた。こつこつやってきた京アニがなぜ…」。大谷内さんはそう嘆く。

 物語を通じて、現実の世界でも多彩な関係性を紡いできた京アニ。市観光協会の多田重光専務理事は「宇治は寺社や宇治茶が観光のメインだったが、遠方からも多くのファンが来るようになり、新たな観光コンテンツをつくっていただいた」。同協会が市観光センターに置くノートには、追悼や祈りの書き込みが今も絶えない。

【 2019年08月21日 17時10分 】

ニュース写真

  • 「秀一パン」とも呼ばれるフランクデニッシュを手にする中路さん。店内にはファンから贈られたという絵が多数飾られている(同市五ケ庄)
  • 「響け!ユーフォニアム」で描かれた大吉山の展望台からは、宇治のまちが一望できる(宇治市宇治)
  • 宇治川沿いにあり、グーグルマップにも登録されている「久美子ベンチ」。写真スポットとなり、ここで楽器を演奏する人もいる(同市宇治)
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