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湯川博士の終戦期の日記初確認 「広島原爆の解説断る」

湯川秀樹博士
湯川秀樹博士

 日本人で初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士(1907~81年)が、1945(昭和20)年の太平洋戦争終戦前後に記した未公表の日記の内容が23日、京都新聞社の取材で明らかになった。玉音放送を厳粛に受け止める様子や京都帝国大教授として軍事研究に関与した情報などがつづられている。終戦前後は公的な発言を控えており、日記からは空白期間の関心事や出来事をうかがい知れる。科学史や科学者の平和活動史を考える上で、第一級の資料といえる。

 湯川博士は34年にノーベル物理学賞受賞につながる中間子論を発表し、戦前から既に世界的な物理学者だった。終戦からしばらくは「沈思と反省の日々」として新聞の寄稿を断るなど沈黙を守り、その後は核兵器や戦争の廃絶を目指して平和活動に情熱を傾けた。

 内容が明らかになったのは45年6月1日~12月31日の分で、表紙に「研究室日誌」「研究室日記」とあるB5判のノート2冊に記されている。遺族の寄贈を受け、京都大基礎物理学研究所の湯川記念館史料室が所蔵する。この日記は38~48年の計15冊があり、残りも分析作業が進められている。湯川博士関連の日記で過去に公表されたのは34(昭和9)年などごく一部にとどまる。

 「登校 朝散髪し身じまいする 正午より聖上陛下の御放送あり ポツダム宣言御受諾の已むなきことを御諭しあり 大東亜戦争は遂に終結」。45年8月15日付にはこう書いてある。

 身なりを整え、国民に敗戦を告げる昭和天皇の玉音放送を聞いたようだ。簡素な表現で感想は一切述べられていないが、何かしらの感慨を持って敗戦を迎えた湯川博士の姿が浮かぶ。

 そのおよそ2カ月前の6月23日付には「F研究」の文字がある。戦中は海軍の依頼で京大の物理学者たちは原爆研究「F研究」に動員された。学内での「第一回打合せ会」が開かれ、出席したと記されている。湯川博士は生涯、原爆開発に関与したことを公的に発言しておらず、自身の手で言及した記録の発見も初めて。

 8月7日は前日に広島へ投下された原爆に関する新聞社の取材に「広島の新型爆弾に関し原子爆弾の解説を求められたが断る」と記載している。同13日には広島で原爆の実地調査をした同僚から報告を受けている。

 空襲の被害を書いたり、ポツダム宣言の全文を写したりしている。戦後には連合国軍最高司令官マッカーサー米元帥の動向に注目し、「憲法改正準備進む」と記すなど時勢に強い関心を寄せていたことが分かる。著名な学者だったため、戦後に連合国側から数度にわたって尋問を受けた形跡がある。慌ただしい中で、戦中戦後も講義やゼミに取り組んでいる様子も見て取れる。

 ■科学史の第一級資料

 湯川博士と親しく、平和活動でも行動をともにした慶応大の小沼通二名誉教授(86)の話 科学史における第一級資料で、公表されることの歴史的意味は大きい。これまで、終戦前後の湯川さんが具体的にどのような動きをしていたのかは知られていなかった。後から思い返したのではなく、戦争当時に強い関心を持ったことを飾り気なく記録している点でも非常に貴重だ。

【 2017年11月24日 08時40分 】

ニュース写真

  • 湯川秀樹博士
  • 8月15日(水) 登校 朝散髪し身じまいする 正午より聖上陛下の御放送あり ポツダム宣言御受諾の已むなきことを御諭しあり 大東亜戦争は遂に終結+
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