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性暴力「あなたは悪くない」支えに 教諭から被害の元生徒

裁判の記録をとじたファイルに手を置く女性。「いつか元気になった時に見直したら『私、頑張ったんだ』って思えるかな」と話す
裁判の記録をとじたファイルに手を置く女性。「いつか元気になった時に見直したら『私、頑張ったんだ』って思えるかな」と話す

 京都地裁で今年11月、京都市立校の教諭から受けた性暴力で精神的苦痛を受けたとして市に損害賠償を求めた裁判の判決があり、市内の女性(23)が勝訴した。知人が加害者である多くの性暴力被害者同様、女性も「自分にも落ち度があったのでは」と悩んだが、支えたのは「あなたは何も悪くない」という支援者の言葉だった。

 ■悩みを聞いてもらえた後で…

 女性は、鳴滝総合支援学校高等部(右京区)に在学中だった2012年、同校の教諭だった男性(60)=14年3月に懲戒免職=に悩みを話すうちに親しくなり、性的関係を持つよう誘われた。「先生は、私のことを否定せず話を聞いてくれた初めての人だった」

 幼いころから家族に虐待を受けて育った。小学校低学年の時、家の冷凍庫の氷を食べたととがめられ、「罰」として氷入りの風呂に入れられた。「唯一の味方は祖父でした」

 小学校高学年。祖父から性器を口に入れられたりする性的虐待を受けた。家族に打ち明けたら「誰にも言ったらあかん」と口止めされた。祖父の要求は続いた。家の中に居場所のない日々。初めて悩みを聞いてくれたのが元教諭だった。

 高校2年のころから自分のことを少しずつ話すようになった。3年の夏休み。初めて校外で会った日に性的関係を持った。以来、毎日のように求められた。

 妻帯者であるのは知っていた。離婚を考えていると聞かされ、自分は大切にされていると思った。だからこそ、卒業後も離婚しない元教諭が信じられなくなって会うのをやめた後も「私も悪かったのでは」と悩んだ。

 身近な家族から虐待を受け続け、嫌なことも「自分が悪い」と捉えるようになっていた。怒りの感情がどのようなものか分からなくなり、心の中のモヤモヤとした気持ちがうまく表現できなかった。そんな女性に代わって怒りをあらわにしたのは相談機関のカウンセラーや無料法律相談の弁護士だった。

 ■自責から抜け、勇気持ち裁判へ

 「『なにその男!?』って、自分のことのように怒ってくれたんです」。裁判に訴える勇気をもらった。知人から「元恋人を訴えるのか」と批判された時は、支援者の言葉を自分に言い聞かせた。「あなたは何も悪くないんだよ」

 悩みを聞いてもらったから。信頼を寄せていたから。「それらは何一つ、性的関係を持つ理由にはなりません」。京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター(京都SARA)=中京区=のスーパーバイザー周藤由美子さんは指摘する。

 「恋人関係のようでも、教師と生徒といった圧倒的な力関係の中では性暴力と変わらない。本当の意味での合意の上での性関係とは言えないのです」

 女性は、今も男性に対する極端な恐怖心から外出もままならない。それでも、裁判の分厚いファイルを見ると「これは私が暴力に立ち向かった証し」と思える。「これからは、私と同じようにつらい思いをしている人の力になりたい」

 <裁判の経過> 男性との関係や学校の対応で精神的苦痛を受けたとして、女性が昨年3月、市を相手に450万円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴した。判決では元教諭の行為を「女性の性的自由を侵害する不法行為」と指摘。「地位がなければ男女関係の継続はなく、性的自由の侵害は職務と一体不可分」として市に150万円の支払いを命じた。

【 2017年12月30日 06時30分 】

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