出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

厳罰化だけでストーカー防げず 出所後も殺意…立ち直り支援

研修会で過去に繰り返したストーカー行為について話す男性(右)=昨年12月15日、京都市上京区・府警本部
研修会で過去に繰り返したストーカー行為について話す男性(右)=昨年12月15日、京都市上京区・府警本部

 京都府警が、ストーカー加害者に対する立ち直り支援に力を入れている。臨床心理士の協力を得ながら、カウンセリングを通じて問題行動の原因を探り、再犯防止を目指す。府警の担当者は「加害者が抱える胸の内を知り、トラブルが悪化するのを止めたい」としている。

 「5年間、相手を殺すことだけを考えていた」。府警が昨年12月、警官や教員、自治体の福祉担当職員らを対象に開いた研修会。関東在住の20代の男性が壇上から抑揚のない口調で、過去に繰り返したストーカー行為を告白した。

 男性は2010年、幼なじみの女性に交際を申し入れたが拒まれ、女性への嫌がらせを始めた。電話で面会を求め続けたり、メールで「おまえを恨んでいる」と送信したりした。半年ほど過ぎたころに女性の職場に押しかけ、11年、脅迫容疑で逮捕された。公判で懲役1年の実刑判決を受けて収監されたが、出所後も憎しみは消えなかった。

 出所の数年後、そんな自分に嫌気がさして民間の相談機関を訪ねた。精神科への通院を勧められ、専門の病院で約3カ月間の入院治療を受けた。それからは「自分には人を殺せない」と言い聞かせることを日課にした。女性への憎悪は徐々に薄らいだ。「逮捕される前に誰かに相談していれば、事件に発展しなかったかもしれない」と話した。

 府警は昨年11月、警察として全国初となる「京都ストーカー相談支援センター」(京都市上京区)を設置し、被害者支援に加え、加害者への立ち直り支援を始めた。加害者側に診療所を紹介するほか、臨床心理士によるカウンセリング(5回分)を公費負担する。同12月までに、ストーカー規制法違反容疑での逮捕者ら3人が治療中という。

 ただ、課題もある。加害者への診療所紹介は全国の警察で行われているが、警察庁によると、各都道府県警が16年度以降に受診を促した870人(昨年11月末時点)のうち、実際に治療につながったのは183人にとどまる。受診拒否の理由は「ストーカーと言われるのは心外」「治療する意思がない」などだったという。

 京都文教大の川畑直人教授(臨床心理学)は「相手の受け止め方に思いが至らず、加害者自身が被害意識を持っている場合もある。治療への気持ちをどう前向きにするかという難しさがある」と指摘する。

 神奈川県逗子市で12年、元交際相手の男に刺殺された三好梨絵さん(当時33)の兄(46)=福岡県=は「厳罰化を進めるだけでは歯止めがかからない。加害者の執着心を取り除くため、早期に相談を受けたり、治療の機会を増やしたりすることが必要だ」と訴える。

【 2018年02月05日 08時21分 】

ニュース写真

  • 研修会で過去に繰り返したストーカー行為について話す男性(右)=昨年12月15日、京都市上京区・府警本部
  • ストーカーの加害者への診療所紹介などに取り組む京都ストーカー相談支援センター(京都市上京区)
京都新聞デジタル版のご案内

    地域の政治・社会ニュース

    全国の政治・社会ニュース