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社説:米中貿易摩擦 強硬策の応酬は不毛だ

 強硬策を連発する米国の通商戦略が、堅調な世界経済の足かせにならないか。一段と懸念を深めざるを得ない。

 トランプ米政権が鉄鋼とアルミニウムに高関税を課す輸入制限を発動した。知的財産権の侵害を理由に、中国製品への大規模な制裁措置も表明した。

 中国は早速、対抗姿勢を示している。「貿易戦争は望まないが、決して恐れない」として米国産農作物などの関税引き上げ品目のリストを公表した。

 だが、強気の応酬は問題の根本的な解決にならない。長引けば世界の株価や為替の神経質な動きも続き、実体経済に悪影響を及ぼしかねない。

 習近平国家主席との関係を重視するトランプ氏だが、通商分野では今年に入って対中けん制を強めている。秋の中間選挙を控え、貿易赤字の約半分を占める対中赤字が減らないことへのいらだちがあるのだろう。

 1月には中国企業が強みをもつ太陽電池製品の緊急輸入制限(セーフガード)発動を決定。今月1日に鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課す今回の措置を決めた。中国などからの鉄鋼の大量流入が米国の軍需産業、安全保障を脅かしているというのが理由だ。

 だが高関税でトランプ氏が言うように米国の製造業が保護され、再生するとは限らない。むしろ鉄鋼の調達コストが上昇して幅広い業界に打撃を与えかねず、米国内でも懐疑的な声が上がっている。

 何より疑問なのは、世界貿易機関(WTO)の規定違反の可能性があると知りつつ、一方的な制裁措置を、国内法を根拠に繰り出すトランプ氏の姿勢である。

 中国による知的財産権の侵害については、日本や欧州も問題視してきた経緯がある。中国への進出企業が合弁会社の設立を通じて技術移転を強いられるといった不満は、日米欧に共通する。

 今回、トランプ氏は知財侵害のWTOへの提訴にも言及したが、かねてWTOに批判的なだけに本気度、優先度は測りがたい。日欧は米国に対し利害の一致点を示しつつ、多国間の話し合いによる紛争解決を説き続ける必要がある。

 鉄鋼・アルミの輸入制限については韓国や欧州連合(EU)などが適用対象から当面外れた一方、日本は残った。いずれにしても米国は個別の交渉で、自国の利益になるよう各国に譲歩を迫るとみられる。こうした手法で同盟国を分断するよりも、連携して中国と交渉する方が得策であろう。

[京都新聞 2018年03月24日掲載]

【 2018年03月24日 11時44分 】

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