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警官への拳銃貸与は妥当か 誤射や自殺のリスクも

巡査が捨てた拳銃の発見現場とみられる田んぼで鑑識作業を行う捜査員ら(4月12日午前7時40分、豊郷町八町)
巡査が捨てた拳銃の発見現場とみられる田んぼで鑑識作業を行う捜査員ら(4月12日午前7時40分、豊郷町八町)

 <19歳の凶弾 下>

 滋賀県の彦根署警官射殺事件は発生から1カ月を過ぎた。勤務中に同僚を撃つという前代未聞の不祥事は、社会に大きな衝撃を与えた。

 彦根署河瀬駅前交番(彦根市)で教育係だった巡査部長(41)=警部に昇任=を射殺して逃走した巡査の少年(19)=懲戒免職=は、犯行から約6時間後の4月12日午前1時35分、愛荘町内をさまよっているところを滋賀県警に確保された。だが、深刻な問題が発覚した。巡査は徒歩で逃げている途中、実弾3発が入った拳銃を捨てていたのだ。

 警察関係者は「もし誰かに拾われたら…。拳銃を捨てるなんてあり得ない」と、その行為に絶句する。県警は捜索のために警察官を大量投入した。「田んぼに捨てた」とする巡査の供述を基に夜を徹して探し、午前7時に豊郷町の田んぼで発見した。「見つかった」との声で警察官がその場所に集まりだした。県警の安堵(ど)が表れていた。

 事件は、警察官が銃器を持つ複数のリスクを突きつける形となった。だが、県警幹部は2日の会見で「拳銃の取り扱いを見直すことはない」と断言した。

 「構えることができる場合」「撃つことができる場合」「手入れ」。拳銃の取り扱いには、細密なルールがある。実際の運用でも、精神的に不安定と判断された警察官は、拳銃が不要な職場に配置転換するなど、厳格な管理をしている。

 ただ、ルールは時代によって変遷してきた。滋賀県警察史によると、警察官の採用下限年齢には変遷があり、それに伴い、拳銃を所持できる年齢にも変化がある。近年では2001年、警察官に危害を加えられる事件が相次いだため、全国的に威嚇射撃なしで発砲できるよう、新ルールが定められた。引き金にゴム製の安全装置を付けるかどうかも、都道府県によって微妙に取り扱いが異なっている。

 「武器は市民との間に壁をつくる」との理念を持つ英国。同国内務省によると、イングランドとウェールズの警察官約12万人のうち95%が銃器を持たず、殺傷能力の低い電気銃や催涙スプレーで地域の安全を守っている。未成年警察官に拳銃が貸与されることはない。体力・心理テストなどを経て、1年ごとに行う銃器使用の演習で合格した警察官だけが使用を許可される。日本以上に厳重な運用といえる。

 所持することが当たり前のように思われてきた警察官の拳銃。だが、精神的に未熟さが残る未成年への貸与は妥当なのか。複数の現職警察官からも運用について再考する余地があるとの声が上がる。一線で働くある警察官は「発砲のルールは厳しく、正直使う機会はない」とした上で、「暴力団やテロ犯罪を除けば、日本で拳銃がないと制圧できない容疑者はほとんどいない。市民の安全を守る地域警官は、必要最低限の実用的な武器があればいいのではないか」と話す。

 警察庁に拳銃発砲の実態を聞いた。全国で「適正、不適正を問わず人に危害を加えた発砲」は、最近5年間で10回。しかし、威嚇発砲や誤射などを含むデータは「ない」という。

 京都新聞の過去記事を調べると、01年以降に京都府と滋賀県で、警察官が拳銃を発砲したのは計12回。強盗犯や逃走車両に対して「適正」に発砲されたのは6回で、今回の警官射殺事件を含め、半数が誤射や自殺などでの発砲だった。

 少年法が専門の後藤弘子千葉大教授は「未成年であっても訓練を受け、警察官としての能力があると考えれば、今回の事件だけで未成年の拳銃所持の在り方が問われるわけではないと思う」とする一方、「安全とされる日本で警察官が危険な拳銃を持つ意味や必要性がどこまであるのか、持たない選択肢も含めた再検討をすべきだ」と話す。

【 2018年05月15日 17時00分 】

ニュース写真

  • 巡査が捨てた拳銃の発見現場とみられる田んぼで鑑識作業を行う捜査員ら(4月12日午前7時40分、豊郷町八町)
  • 2001年以降の京都滋賀の警察官銃発砲事案
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