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反発越え「固有種守る」 平成の滋賀県政、国松善次知事

琵琶湖で釣り上げた外来魚の重さを計ってもらう国松善次知事(2003年7月、草津市内)
琵琶湖で釣り上げた外来魚の重さを計ってもらう国松善次知事(2003年7月、草津市内)

 <平成の滋賀県政 国松善次知事(1998~2006)>

 6月7日告示、24日投開票の滋賀県知事選は、平成時代最後を飾る県政の舵取り役を選ぶ。平成を支えた3知事(現職除く)の決断や政策を通じ、時代の変遷を振り返る。

 その日、滋賀県議会の議場は緊迫した空気が充満していた。

 2002年10月16日。ブラックバスなど外来魚の再放流(リリース)を禁じる日本初の条例が成立した。反対派の釣り愛好家や業界団体が傍聴席を埋めた。怒りの声を上げ、議場中央にいた知事国松善次(80)をにらみつけた。

 国松は胸をなで下ろしていた。「琵琶湖の固有種を守るため、絶対に必要な条例なんだ」。反発に負けず、信念を貫いた自負があった。

 琵琶湖で1980年代に急増した外来魚。一方でホンモロコなど在来魚が大きく減り、漁師が苦しんでいた。県は85年からバスなどの駆除を始めたが、それを尻目に県外からの釣り客は再放流を繰り返した。国松は歯止めをかけるには、条例化が不可欠だと考えていた。

 県は02年6月に条例の要綱案を公表。バス釣りブームのさなか、全国の愛好家から抗議のメールやファクスが殺到した。「レジャーの自由を侵害する」「(魚を殺さない)リリースはわれわれの文化だ」。意見は異例の2万件超に上った。

 90年代から普及したインターネットでは、今で言う「炎上」が起きた。掲示板に県への反論や誹謗(ひぼう)中傷の書き込みがあふれた。反対派100人が県庁の知事室に押し寄せ、撤回を迫った。条例制定後には、愛好家のタレントが条例は憲法違反だとして民事訴訟を起こした。

 国松は折れなかった。悩む職員に対し、「必ず成立させるんだ。わしが責任を持つ」と鼓舞し続けた。反対派が東京で開いた集会には、周囲の制止を振り切って自ら出席し、生態系保全のため、再放流をしないよう理解を求めた。

 条例提案前の記者会見。全国の注目を浴びる中、通常の2倍近い数の報道陣が集まった。国松は「県民はレジャーの被害者的な立場にある。反対は多いが、新しいルールが必要だ」と言い切った。条例は県議会の全会一致で成立した。

 再放流禁止だけでなく、国松県政は環境重視の色合いを鮮明にした。同じ条例には、ボートや水上バイクのエンジン規制も含まれていた。21世紀という時代の節目。「琵琶湖を抱える滋賀が、全国に先駆けて環境県を打ち出すことは武器になる」との考えがあった。

 16年が経過した今、湖岸には外来魚回収ボックスが並び、再放流禁止ルールは釣り客の9割超が認識する「常識」になった。琵琶湖博物館専門学芸員の中井克樹(56)は「条例によってブラックバスによる被害が社会に認知された」と意義を語る。

 だが外来魚の再放流はなくなっていない。知事を退任した今も、国松は琵琶湖の環境を気にかけている。「魚の目線に立って考えないといけない。琵琶湖の保全は永遠のテーマです」

 ■環境と経済両立模索

 前任知事の後継として1998年の滋賀県知事選で初当選した国松善次氏(2期8年)は「環境と経済の両立」をテーマに掲げた。減農薬の農産物推進など、現在につながる政策を多く残した。

 県職員時代、武村正義知事のもとで琵琶湖の赤潮対策などに取り組み、「環境問題に目覚めた」と自負する。2001年に始めた環境こだわり農産物の認証制度は、農薬や化学肥料を半減させ、安心して食べられる「エコ農業」としてブランド化を図った。全国初となる農家への助成金制度も創設した。

 外来魚の再放流禁止と同じ条例では、環境負荷の大きい2サイクルエンジン積載ボートの航行を禁止した。01年に世界湖沼会議を県内開催し、国際的な水環境の保全に向けた「琵琶湖宣言2001」を採択。03年には世界水フォーラムも開催した。琵琶湖の水質を昭和40年代に戻す「マザーレイク21計画」も策定した。

 バブル経済崩壊後の「失われた10年」の中で、新たな成長モデルを試行した。98年にびわ湖環境ビジネスメッセを始め、バイオ系技術者の養成拠点として長浜バイオ大を誘致した。

 「滋賀の経済発展に必要だ」と訴えた2大インフラ事業は実現しなかった。びわこ空港計画は地権者の反対が根強く、00年に事実上の凍結を表明。栗東市に計画した新幹線新駅は着工にこぎ着けたが、新知事に就いた嘉田由紀子氏がストップをかけた。国松氏は「新駅中止はもったいなかった。今でも間違いだと思う」と未練をにじませる。

 県財政は02~06年度まで5年連続で一般会計の当初予算額がマイナスに。行財政改革を進め、職員給与も削減した。その一方で「行政と県民の協働」を打ち出し、市民活動を支援する基金を設けた。

 健康長寿県を目指し、訪問介護などの相談を受けるアドバイザーを県内各地に配置。生涯スポーツの世界大会誘致にも乗り出した。教育面でも、県立高の通学区を全県一区に改革。教育長に民間企業の社長経験者を充てるなど、独自色を示した。

=敬称略、3回続きの2回目。

【 2018年05月30日 17時10分 】

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