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慢性の痛み軽減し就労支援 滋賀医大病院、並行治療で効果

理学療法士、臨床心理士らも交え、慢性の痛みを訴える患者の治療方針を検討する出席者ら(大津市瀬田月輪町・滋賀医科大付属病院)
理学療法士、臨床心理士らも交え、慢性の痛みを訴える患者の治療方針を検討する出席者ら(大津市瀬田月輪町・滋賀医科大付属病院)

 慢性の痛みを緩和する治療が注目されている。厚生労働省は医療体制の整備を進めており、与党内には慢性の痛み対策の基本法制定を目指す動きもある。先行して取り組んできた滋賀医科大付属病院(大津市)は「痛みを軽減して就労できる支援を行うことで、患者にも社会にもメリットがある」と強調する。

 60代男性は腰の痛みが数年間続いた。体を後方に曲げることがつらく、仕事に支障を来すようになった。同病院での診断で、椎間関節痛と、股関節周囲の筋肉が固くなったことによる慢性的な痛みという、複数の症状が重なっていることが疑われた。

 治療ではまず、男性に特殊な高周波を流す治療を施した。半年から1年程度、痛みを軽減するためだ。痛みへの恐怖心を取り除いた上で、理学療法士によるストレッチ指導などを半年間行った。固まった筋肉をほぐし、生活習慣や筋肉のバランスも考慮した指導を続けた結果、通常の生活や仕事ができるようになった。

 同病院は2007年、国公立大の病院で当時初めて「ペインクリニック科」を設立。麻酔科の一部門から独立させ、がんや神経痛、椎間板ヘルニアなどさまざまな痛みの緩和治療を手掛けてきた。現在はこれを発展させて院内に「学際的痛み治療センター」を設け、理学療法士や臨床心理士、作業療法士など診療科・職種を横断した治療を行っている。

 治療目標は生活の質(QOL)の向上だ。診療科・職種の連携について、ペインクリニック科の福井聖科長は「一時的に痛みを取り除けばいいのではなく長期的な視点で、生活習慣など患者の自己管理までサポートするため」という。

 関係するスタッフが週1回集まり、治療の進展度合いと今後の方針を情報共有する。痛みが続くと気持ちが沈み、痛みをよりつらく感じるようになる悪循環があり、運動機能面と心理面の治療を並行させる効果は大きいという。

 日本では患者、医療側ともに緩和より根治を重視してきた。症状が改善しないまま患者がさまざまな医療機関を回るケースは「痛み難民」と呼ばれる。60代男性も同病院を受診するまでに8カ所の医療機関で薬物療法などを受けていた。

 これに対し、海外では痛みを緩和しながら就労を支援する考え方が一般的という。福井医師らの厚労省研究班は、現在は全国22カ所の痛みセンターを全都道府県に整備すれば、痛みによる労働価値の損失を抑え、痛み難民減少による医療費削減分と合わせて、年間250億円の経済的価値をもたらすと試算し、センター拡充を訴える。

 きめ細かい就労支援を実現するため、滋賀医大病院は県内の産業医と連携した診療モデルを構想している。職場・企業と産業医、痛みセンターの3者で職場復帰の時期を決め、そこから逆算してリハビリや心理ケアなどのプログラムを組む仕組みだ。現在は滋賀医大所属で産業医でもある医師のいる大津の診療所と実施している。福井医師は「地域医療が痛み対策に果たす役割は大きく、かかりつけ医などと連携した体制整備が必要だ」と指摘している。

【 2018年07月23日 12時00分 】

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