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営業90年のうどん店、豪雨で閉店 京都・福知山

長年にわたり地域の人たちに親しまれてきた店内をさみしそうに眺める荒木さん夫妻(福知山市大江町蓼原・荒木うどん店)
長年にわたり地域の人たちに親しまれてきた店内をさみしそうに眺める荒木さん夫妻(福知山市大江町蓼原・荒木うどん店)

 由良川沿いの静かな町で、90年以上にわたり営業を続けてきた京都府福知山市大江町の一軒のうどん店が、西日本豪雨の被害を受け、再開のめどが立たないまま、閉店することになった。老夫婦が二人三脚で店を切り盛りしてきたが、高齢の体に浸水が追い打ちを掛けた。自家製麺にこだわった地域の名店が、ファンに惜しまれながら静かにのれんを下ろす。

 同町蓼原の「荒木うどん店」。2代目の荒木大典さん(89)、八重子さん(88)夫妻が、大正末期に大典さんの父・喜一さんが創業した店を守り続けてきた。人気メニューは、細めの柔らかい自家製麺に、昆布とカツオのだしを合わせた天ぷらうどんやカレーうどん。店の隅のケースには八重子さんが作る魚の煮付けや厚焼き卵、すしなどの一品も並び、昼時には地元住民らでにぎわった。

 店は昭和から平成にかけ、移り変わる地域の暮らしに寄り添ってきた。多くの客でにぎわった昭和の中ごろ、初夏の養蚕期には農家のおやつにかしわ餅を配達し、夏祭では路上で子どもたちにかき氷を売った。夜は近くの鉄工所で働く男たちが集い、日付が変わるまで酒を交わしたという。平成に入り昼のみの営業になっても、温かい味と夫妻の人柄が人を引きつけ、客が途切れることはなかった。

 西日本豪雨では、内水氾濫で地域一帯が浸水。店は床上2メートル近くが水に漬かり、40年以上愛用してきた製麺機も壊れた。2004年の台風23号や13年の台風18号など、今まで幾度となく浸水被害を受け、その度に再開してきたが、「年もあり、今回はどうしようもない」と店を畳むことを決めた。

 同店には親子代々で通う常連も多く、被災以来、再開日を尋ねる電話が鳴る。近くのガソリンスタンドで働く新井照重さん(70)は「20代からお昼は毎日のように通い、座敷で休ませてもらうこともあった。今では地域で数少ない飲食店だった」と残念がった。

 夫妻にとっても、水害での閉店は予想外だった。「もう少し続ける予定だったが…。お客さんには、長いことお世話になって、『ありがとう』と言うほかない」。思い出が詰まった小さな店を、夫妻はさみしそうに眺めた。

【 2018年08月14日 09時00分 】

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