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社説:米のCO2規制 緩和は国際潮流に逆行

 トランプ米政権が火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出規制の緩和を発表した。

 オバマ前政権の「クリーン・パワー・プラン」に代わる新ルールで、米国の温暖化対策が大きく後退するのは間違いない。世界第2の温室効果ガス排出国の責任を放棄したとも言える。

 規制緩和は発電所からのCO2排出量削減の数値目標を盛り込まないなど、石炭業界や化石燃料を生産する州に配慮した形だ。規制策定は各州に委ねるが、実効性に疑問符が付く。

 排出削減は太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入ではなく、石炭火力発電所の効率向上で進めるとし、施設改修の条件も緩和する。再生エネなどに置き換える予定だった老朽火力発電所の稼働延長につながりかねない。

 前政権は規制によって発電所からのCO2排出を2030年までに05年比で32%削減する目標を掲げた。温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で米国が掲げた目標達成に向けた中核政策だった。

 ところが、トランプ氏は昨年6月、パリ協定から離脱する方針を表明し、10月には前政権が強めた規制も撤廃した。温暖化対策の旗振り役を務めたオバマ前大統領のレガシー(政治的遺産)崩しの一環に違いない。

 前政権からの政策転換は一段と鮮明になった。トランプ政権は温暖化対策を単に経済的損失と受け止めるが、むしろ新技術を創出するビジネスと位置付けて前向きに方策を議論すべきではないか。

 北半球の各地で今夏、熱波や干ばつなどが相次ぎ、山火事や熱中症など深刻な被害を招いている。日本も記録的な猛暑と豪雨に見舞われた。それぞれの異常気象を科学的に温暖化の影響だと結び付けるのは早計とはいえ、その進行と無関係ではないだろう。地球環境の悪化は急速に進んでおり、温暖化対策は猶予がない。

 片や日本はどうか。エネルギー基本計画を改定し、再生エネを「主力電源化」するとしたが、火力発電を温存させる。とりわけ温暖化の主因とされる石炭火力が発電全体の約3割を占め、多くの新増設計画もある。パリ協定採択後、多くの国が脱石炭化を急ぐ中、石炭火力技術の輸出を推進する日本の政策は世界の流れに逆行する。

 パリ協定では、全ての国が温室効果ガスの排出削減に取り組む。過去に大量排出し、なおも規制に後ろ向きな米国の姿勢は国際社会の連携を妨げる。日本も他山の石として受け止める必要がある。

(京都新聞 2018年08月25日掲載)

【 2018年08月25日 11時00分 】

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