出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

社説:児童虐待13万件 地域で相談所支えよう

 全国の児童相談所が2017年度に児童虐待の相談や通告を受けて対応した件数が13万3778件(速報値)に上り、過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめで分かった。

 統計を始めた1990年度から27年連続の増加である。

 配偶者への暴力で子どもがストレスを受ける「面前DV」が心理的虐待として認知され、通告が増え続けている。通報を受けた警察が児相通告を徹底させていることが反映されたようだ。

 毎年数字が更新される背景には社会的な意識の高まりもあるだろう。だが、これまで見えていなかった子どもの被害が明らかになってきているのは間違いない。

 深刻なケースも後を絶たない。3月に東京都目黒区で、当時5歳だった船戸結愛ちゃんが両親から虐待され死亡した事件は社会に衝撃を与えた。

 この事件を受け、政府は7月に虐待防止の緊急対策を策定した。保護者や子どもの対応に当たる児童福祉司を22年度までに約2千人増員することを決めた。

 しかし、一人前に仕事ができるようになるには時間がかかる。すぐに体制強化につながるわけではない。

 一方、事件を受けた緊急対策の一環として「48時間以内の安全確認」ルールが強化された。児相職員の疲弊が進む恐れもある。「現場は限界に近い」との声も聞かれるという。

 問題解決を「児相任せ」にしないためにも、防止に向けた地域での取り組みが求められる。自治体や学校などの積極的な関与は必要不可欠だろう。

 兵庫県明石市では14年度から、独自に子どもの安全確認強化に乗り出した。市内の全ての子どもに会う「こどもスマイル100%プロジェクト」だ。

 乳幼児健診を受けていない家庭は「虐待のリスクがある」として市の保健師らが家庭訪問を続け、本人に会うことを徹底。発達や養育状況に問題があることが分かり、継続的な支援につなげたケースもあるという。

 画一的な対応を求めるのではなく、現場の児相に一定の裁量を与えた上で、それぞれの地域のマンパワーを結集するような体制づくりができないだろうか。

 虐待の背景には保護者の孤立や貧困、子どもの発達などの事情があるといわれる。虐待を防ぐにはそうしたところまで社会で手を差し伸べる必要がある。

[京都新聞 2018年09月05日掲載]

【 2018年09月05日 10時51分 】

京都新聞デジタル版のご案内

    地域の政治・社会ニュース

    全国の政治・社会ニュース