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コラム凡語:サン・チャイルド

 一つの美術表現をどう見るかは人それぞれだし、共感もあれば反感を持たれることもある。おそらく、そうした反応まで含めた総体が「作品」なのだろう▼福島市がJR福島駅近くに設置した高さ6・2メートルの子ども像「サン・チャイルド」が、福島第1原発事故の「風評被害を助長する」などと批判され、撤去された▼黄色い防護服姿でヘルメットを脱いで立ち、放射線量計を模した胸のカウンターには「000」と表示されていた。放射性物質の心配のない未来への願いを託した像だったが、意図は伝わり切らなかったようだ▼作者で京都造形芸術大教授のヤノベケンジさんは、チェルノブイリ原発事故の被災地を訪ねて作品にするなど、長年、原子力や放射線の脅威をテーマにしてきた。撤去は残念だが、「分断や対立を生むなら展示を取りやめた方がよい」と考えたという▼その判断は尊重されるべきだし、第三者がとやかく言うことではない。ただ、こうした賛否が分かれる作品は、表現と社会の関係や公共の場でのアートの在り方を市民が議論し、考えを深めるいいきっかけになったはずだ。撤去までにもう少し時間がほしかったとも思う▼ヤノベさんは今後も福島と向き合い、市民との対話を求めていくつもりだ。急がずに、溝を埋めていってほしい。

[京都新聞 2018年09月22日掲載]

【 2018年09月22日 16時00分 】

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