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社説:土砂警戒区域  指定へ国は本腰入れよ

 土砂災害への対応は待ったなしのはずだ。

 震度7の地震を観測し、住民36人が土砂崩れによって死亡した北海道厚真町で、住宅近くの「土砂災害危険箇所」の43カ所で土砂崩れが起き、うち22カ所は土砂災害防止法で避難計画策定などを義務づけられる「土砂災害警戒区域」に未指定だったことが分かった。

 土砂災害警戒区域は、土石流や崖崩れといった土砂災害が発生した際、住民に危害が生じる恐れがある区域。市町村は避難場所などを盛り込んだ地域防災計画を策定することが義務づけられる。

 道関係者によると「対象が点在し、予算の関係から各年に振り分けられていたため調査が遅れていた」という。

 少なくともうち3カ所で計7人が犠牲になった。対策を取っていれば被害が軽減された可能性は否定できない。

 土砂災害防止法は1999年に広島県で30人以上が死亡した土砂災害を機に、2001年に施行された。だが、指定について自治体の進捗(しんちょく)状況に大きな格差が生じているのは見逃せない。

 国土交通省によると、警戒区域候補は3月時点で全国約66万3千カ所にのぼる。うち8割の約53万1千カ所が指定されているが、全ての候補地が指定済みなのは14府県にとどまっている。

 北海道のほか5県は指定率が半分以下で、最も低い千葉県は32%。京都は98%、滋賀は76%だ。

 格差の背景には作業の煩雑さに加えて、地価下落や風評に対する住民の懸念がある。住民説明会では、指定に反対する意見が出ることもあるという。

 しかし、法施行から15年以上経過しても指定が進まないのは、憂うべき状況だ。教訓が生かされていないといわざるを得ない。

 危険箇所が多く、予算やマンパワーが足りない自治体もあるだろう。法律を作ってあとは任せるのではなく、財政面、技術面を含め、国が主体的に取り組むべきではないか。

 警戒区域の設定自体は大雨による被害を想定しているが、専門家は地震を想定した対策を進める必要性を訴えている。「災害の場所は大雨と地震で重なる部分が多い」からだ。

 住民の理解もより得やすくなると期待できる。

 国の災害対策はハード面の「強靱(きょうじん)化」に偏りがちだが、被害軽減はソフト面が大きな鍵を握る。かつてない災害が相次いだ今夏は、それが身にしみたはずだ。

[京都新聞 2018年10月10日掲載]

【 2018年10月10日 13時47分 】

岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

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