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「刑事責任なし」でも職員3割退職 京都の特養、虐待疑い

京都府が業務上過失傷害容疑で刑事告発していた特別養護老人ホーム「安寿の里」(2018年2月16日、宮津市由良)
京都府が業務上過失傷害容疑で刑事告発していた特別養護老人ホーム「安寿の里」(2018年2月16日、宮津市由良)

 京都府宮津市由良の特別養護老人ホーム「安寿の里」で、入居者への虐待疑惑が表面化して8カ月。京都府からの刑事告発を受理した府警は14日までに、介護職員らが暴力を振るうなどした事実は確認されず、施設側の刑事責任を問うことはできないと判断した。府が疑惑を公表して以降、同ホームは多数の職員が退職し、一部事業は休止に追い込まれた。運営法人は「行政判断が福祉現場に与える影響の大きさを自覚すべきだ」と苦言を呈した。一方、複数の入居者がけがをした事実は認め、入居者や家族に謝罪した。

 虐待疑惑は、府が2月16日に記者会見して表面化した。介護・地域福祉課の担当者は「通常の介護ではできない傷」と強調し、施設職員による暴力行為があった可能性を示唆した。一方、施設側は「事故」と訴え、両者の主張は激しく対立した。

 今回、府警は施設側の刑事責任は問えないと判断した。介護・地域福祉課は「会見当時の府の調査は十分でなかった」と認めつつ、「事案の件数や悪質性などを踏まえて適正に判断した」と説明。府の対応に問題はなかったとの姿勢を崩していない。

 しかし、府が疑惑を公表して以降、施設職員の3割近くが「犯罪者扱いされるのは嫌」などとして次々と退職。施設は人員不足に陥り、ショートステイ事業を休止せざるを得なくなった。運営する社会福祉法人「香南会」(高知県香南市)の橋本信一理事長は「調査が不十分な中で、大々的に公表されたことは遺憾。入居者や家族、地域住民に大きな不安を与えた府の責任は重い」と憤る。

 ただ、複数の入居者が転倒するなどしてけがをしている事実を受け、再発防止にも取り組んでおり、7月、法人内に事故対策室を設置。運営する全65事業所に対し、入居者の負傷事案をすべて報告させる仕組みを作った。橋本理事長は「どうすれば入居者がけがをするような事故を防げるか。医学的知見を取り入れながら、安心して暮らしてもらえる施設にしたい」と話した。

【 2018年10月15日 11時50分 】

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