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発達障害の子育てるママ会社員(下)在宅勤務で困難乗り越え

南條美樹さんが出版した「いちにちいっぽ」の育て方
南條美樹さんが出版した「いちにちいっぽ」の育て方

 自閉症スペクトラムの長男K君(10)を育ててきた南條美樹さん(40)=京都府在住。家庭療育と正社員の仕事を両立させるのは容易なことでなかったが、当時まだ先進的だった勤務制度を利用することで困難を乗り越えた。

■療育支えた在宅勤務

 K君は2歳から療育教室に通い始めたため、南條さんは週に数日、保育園と療育教室と、1日2回の送り迎えをこなさなければならなかった。就学後しばらくは登下校の付き添いが必要だった上、2年生の春には荒れた行動が目立ったため、毎日のように学校に行って様子を見守った。通常の勤務体系であれば、仕事を続けることは難しかっただろう。

 幸いだったのは、勤め先の会社が2006年にいち早く在宅勤務制度を導入したことだった。南條さんは第1子の長女を産んだ時から制度を利用し、自宅に置いたパソコンで社内報の作成などに携わった。K君が生まれた後もそのまま利用を延長。出社は週1、2度でよかったため、育児と仕事を両立できたという。

 とはいえ、迷いがなかったわけではない。療育支援の関係者に「家で仕事をすると、K君が母親と認識できないのではないか」と、暗に育児に集中するよう促されたこともあった。だが、南條さんにとって会社は「私の存在を子どもと関係なく受け入れてくれる場所」。母親として思うに任せない子育てに悩む毎日の中で、働くことが心の大きな支えになったという。

■特別なことではない

 南條さんは昨年、京都市が募集した「真のワーク・ライフ・バランス」実践エピソード表彰で市長賞に選ばれ、セミナーなどで講演する機会もできた。その中で、他社の関係者から「在宅勤務は労務管理が難しい」「一部の労働者の特別扱いになる」という意見を聞いた。

 南條さんは「みんなと同じ場所で同じ働き方をするのが難しい私は、みんなと同じことをするのが苦手な発達障害の息子と同じ定型外の存在。だけど、在宅勤務のおかげで働き続けられた」と振り返り、「(2016年制定の)障害者差別解消法は、ハンディのある人が日常生活に困らないようにする『合理的配慮』を行政や学校、企業に求めている。それは特別扱いではなく、みんなと同じスタートラインに立てるようにすること。在宅勤務も同じ視点でとらえ、職場に取り入れてほしい」と理解を求める。

■障害者と家族の活躍支援

 南條さんは今、自身の経験を生かし、発達障害の子を持つ保護者の相談に乗るブログ「いちにちいっぽ相談室」を運営している。昨年9月に立ち上げた一般社団法人「チャレンジドLIFE」(京都市南区)の副代表としても活動。発達障害のある人やその家族が活躍できる社会の実現を目標に掲げ、母親が学び合うワークショップを開いている。

 南條さん自身、これからK君がどのような人生を歩むのか、進学や就労はどうするのか、多くの悩みを抱えている。「学校に入るのがゴールではない。大人になってから必要になる能力を今から身に付けていく必要がある。ほかの保護者もそこに目を向けてほしい」。チャレンジドLIFEでは今後、障害のある人の就労や社会参加のための活動に力を入れていくという。

 著書は「miki」のペンネームで出版しており、1400円(税別)。アマゾンなどで購入できる。トークイベントを11月4日に堺市、同18日に名古屋市で催す。問い合わせは電子メールchallengedlife001@gmail.com

【 2018年10月17日 13時57分 】

ニュース写真

  • 南條美樹さんが出版した「いちにちいっぽ」の育て方
  • 南條美樹さんの長男がその日やることを確認するためのスケジュール板。見通しを示すことが安心感につながった
  • 長男に勉強を教える南條美樹さん。正社員として働きながら、家庭療育と両立させてきた
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