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「小学校卒業まで9年間しゃべらなかった」 書店主が自伝的絵本

やましたくんはしゃべらない
やましたくんはしゃべらない

 京都市左京区の書店「ホホホ座浄土寺店」店主の山下賢二さん(46)が自身の幼少期をつづった絵本「やましたくんはしゃべらない」を出版した。山下さんは幼稚園から小学校までの9年間、家族とは話すのに、学校では話さない日々を過ごした。「こんな子どもがいることを知ってほしい」と話している。

 山下さんが話さなくなったきっかけは、幼稚園の入園日。「見知らぬ人に自己紹介するのが恥ずかしくなって固まってしまった」。以後、「しゃべらない子」と自らをキャラクター化。家では家族全員とベラベラとしゃべるのに、自宅から一歩外に出ると一転、無口になった。

 小学校に入ってもしゃべらなかったが、明るい性格ゆえ、友だちとしょっちゅうふざけたという。「しゃべらないことが居心地よかった。友だちと意思を疎通する時はジェスチャーか筆談でした」。体格がよく、運動もできたことなどから友人は多く、しゃべらないことが理由でいじめに遭ったことはなかった。むしろ周囲は山下さんを大事にして、秘密を打ち明ける同級生もいた。

 だが周囲の大人は山下さんを話すまで居残りをさせるなどいろいろ試みた。口を開けた人の絵を描くと「山下はみんなとしゃべりたいんや」と山下さんの気持ちとは全く違う解釈をした教師もいた。

 「しゃべらないのが普通の生活で、しゃべりたいという衝動もありませんでした。でも6年になって『このままだと中学校では通用しない』と気づき、卒業式の日、名前を呼ばれて、初めて『はい』と言いました」

 絵本ではそんな小学校での日々をつづった。山下さんの元には読者からは「うちの子どもも同じ」という声が多く寄せられている。学校など特定の場所で話せなくなる「場面緘黙(かんもく)症」を打ち明ける人もいたという。

 山下さんは「どうか子どもたちの心を無理にこじ開けないでほしい。僕自身そうでしたが、自分で判断して、自分自身で心の鍵を開けたいと思っているんじゃないかと思う。状況はひとりひとり異なるとは思うが、近くにいる人が見守りながら、心の開け方をそっと提示するなど、その子の特性にあった方法を導いていってほしい」と話す。

 岩崎書店刊、1728円。

【 2018年11月17日 18時12分 】

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  • やましたくんはしゃべらない
  • 「しゃべらないことは僕にとって、陰ではなく、陽のイメージだった」と語る山下さん(京都市中京区)
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