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建設残土の崩落被害、各地で発生 処分場少なく、再利用も進まず

西日本豪雨で建設残土が流出した現場。残土は竹をなぎ倒し、民家近くまで迫った(12月19日、京都市伏見区小栗栖)
西日本豪雨で建設残土が流出した現場。残土は竹をなぎ倒し、民家近くまで迫った(12月19日、京都市伏見区小栗栖)

 建設残土を巡って近年、一部の民間処分場で災害時に土砂が崩れ、民家に流れ込むなどの被害が各地で起きている。背景には処分場が少なく、事業者が土砂の持って行き場に困っている現状がある。国や自治体は規制強化やリサイクルの促進など対策を進めるが、多くは未利用のまま処分されているのが実態だ。

 国土交通省によると、2001~16年に全国で建設残土が崩落した事案は14件に上る。09年には広島県東広島市で民家に土砂が流入し、2人が死傷した。14年には大阪府豊能町で土砂が車道に流れ、半年近く通行止めが続いた。

 京都市伏見区小栗栖の大岩山では、山の南側斜面に積まれた残土が7月の西日本豪雨で崩落し、住宅街の約10メートル手前まで迫った。市によると、市内の土木会社から昨年、「太陽光パネルを設置するので山頂付近を造成したい」と相談があった。だが、実際には残土処分場として大量の土砂を受け入れていた。

 残土を持ち込んでいた京都市内の運送会社の男性社長(49)は「依頼したその日のうちに運んでも受け入れてくれるありがたい存在だったが、後に問題があると分かり使うのをやめた」と明かす。搬入作業に当たった元従業員によると、処分料は10トントラック1台当たり8500円。「6千~1万円」という相場の範囲内だが、他の処分場よりも少ない人員や重機で作業を行うことで利益を上げていたという。

 残土処分場の数について明確なデータはないが、男性社長は「常に処分場を探している状態。京都府内に処分場は足りない」と話す。

 災害時の崩落防止や適切な処理のため、京都府を含む20都府県と約300市町村は昨年8月までに、残土を受け入れる事業者に事前許可や土質調査などを義務付ける土砂条例を制定している。ただ、小規模事業所は許可が不要で、罰則は100万円以下の罰金にとどまるなど実効性は高くない。京都市のように条例を定めていない自治体も多い。

 国交省によると、12年度に国内で発生した建設残土約1億4千万立方メートルのうち再利用されたのは36%で、残りの64%は未利用のまま処分された。同省は搬出、搬入双方の情報を集約しマッチングさせるためのホームページを15年に立ち上げたが、今年3月末までにマッチングが実現したのは14件(14万立方メートル)のみ。同省の担当者は「時期や土質が合わないことが多い。まずは制度の周知を図りたい」としている。

◇仮置き場設置を

 建設残土に詳しい京都大の嘉門雅史名誉教授(環境地盤工学)の話 大阪万博の開催が決まったことで、人工島の夢洲が有力な残土の受入地となり、関西で数年間は処分に困らなくなる可能性が高い。ただ、東京五輪に向けたインフラ整備に伴い、建設残土は全国的に増加傾向にある。国のマッチング制度の活用を進めるには、残土の仮置き場を開設し、搬入・搬出双方の時間差や土質を調整する方法が考えられる。課題は、誰が仮置き場を設置するかだ。まずは、行政や事業者の間で再利用の意識向上に努めてほしい。

【 2019年01月04日 11時21分 】

ニュース写真

  • 西日本豪雨で建設残土が流出した現場。残土は竹をなぎ倒し、民家近くまで迫った(12月19日、京都市伏見区小栗栖)
  • 西日本豪雨で建設残土が流出した現場。写真中央の樹木をなぎ倒した(12月19日、京都市伏見区小栗栖)=小型無人機から
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