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社説:日産前会長出廷 長期勾留を続けるのか

 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者が、昨年11月に逮捕されてから50日ぶりに公の場に姿を見せた。

 弁護側が求めた勾留理由開示の手続きで東京地裁に出廷し、「嫌疑はいわれのないもの」と無罪を主張した。自らすすんで臨んだ意見陳述である。

 東京地検特捜部と全面的に争う姿勢をはっきりと示した。国内外で注目される事件。日産、ルノーの思惑が複雑に絡む様相になっているが、ここは偏りのない目で捜査の行方を見ていく必要がある。

 最初の逮捕は、役員報酬を少なく有価証券報告書に記載した金融商品取引法違反の疑いで、形式犯との見方もされた。今回の手続きは、再逮捕された会社法の特別背任事件が対象だ。

 ゴーン容疑者の資産管理会社が、2008年のリーマン・ショックで出た約18億5千万の評価損を日産に付け替え、元に戻す際に信用保証に協力したサウジアラビアの知人側に子会社から約16億円を入金させた-との疑いだ。

 勾留理由を問う中で、ゴーン容疑者側は強く否定した。「日産と銀行を含めた3者合意があり損失の付け替えではない」「知人側の会社は日産のために活動しており正当な対価だ」。これに対し、これまで特捜部は「日産が損失負担のリスクを負った時点で特別背任罪は成立する」「取締役会では損失した取引は伏せられていた」としている。

 ゴーン容疑者は意見陳述で「全力を尽くして、公明正大かつ合法的に業務を推進してきた」と日産復活への貢献を力説した。しかし、容疑とは別に、海外の高級住宅の無償利用など「公私混同」の疑惑が浮上している。こちらの釈明もしなければなるまい。

 勾留理由の開示は「何人も理由を直ちに告げられ、弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留または勾留されない」とした憲法34条と刑事訴訟法82条に定められている。ゴーン容疑者側は、この規定を積極的に使い、国内外に無罪をアピールしたといえよう。

 司法統計によると、17年に裁判所が出した勾留決定は約10万4千件に上るが、理由の開示請求はわずか約580件。勾留理由となる「証拠隠滅と逃亡の恐れ」の判断が形式的になり、弁護士側も請求を諦めていないだろうか。

 長期勾留は、今回の事件で海外から批判の目を向けられているが、すでに国内で問題を指摘されてきた。見直す必要がある。

【 2019年01月09日 11時37分 】

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