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厚労省の調査、ずさんさ裏付け 旧優生保護法下の強制不妊手術

厚生労働省の強制不妊手術記録の調査結果
厚生労働省の強制不妊手術記録の調査結果

 旧優生保護法に基づく強制不妊手術の申請書が見つかった知的障害児施設「滋賀県立近江学園」(湖南市)は、厚生労働省が実施した昨年の全国調査では記録を発見できなかった。同調査は回答率の低さが問題となっていたが、「ない」と答えた施設にも重要な資料が埋もれていたことになり、ずさんさを裏付けた形だ。同省は「再調査の予定はない」としており、実態解明には消極的だ。

 厚労省は昨年7~9月、都道府県と政令指定都市、中核市を対象に、医療機関と福祉施設が保有する手術記録や申請書を探すよう要請した。選択肢は「ある」「ある可能性がある」「ない又(また)はない可能性が高い」の3種類だが、「診療記録の洗い出しは求めない」「回答は任意」と通知し、厳格さを欠いた。

 その結果、施設の回答率は京都府4%、滋賀県58%と低く、回答した施設でも「ない又はない可能性が高い」は京滋とも9割超を占めた。全国の総計でも同様の結果で、「ある」と答えたのは176施設で全対象の0・1%だった。

 近江学園は厚労省調査の際、旧優生保護法に関係する資料をまとめたファイルが見つからず、元職員数人が「学園の手術申請はなかった」と話したことを理由に「記録なし」と回答した。今回情報公開請求を受け、過去の入所者も含めた約1400人分の児童記録や医務日誌を初めて調べたところ、当時10代の少女のファイルに優生手術申請書や健康診断書を見つけた。

 同学園は「資料が膨大で業務も多忙な中、国の調査は『ない可能性が高い』と緩めの回答で良かったが、公開請求は『ない』と断定する必要があり、徹底して調べた。結果として前回の調査は甘かった」としている。

 滋賀県は「救済対象になり得る貴重な資料。今後、記録が新たに見つかる可能性があると分かった」とする一方、「調査手法は国の依頼通りで問題ない。権限がなく強制的に探してもらうことはできず、マンパワーの問題もある。県独自に再調査をするかは未定だ」とした。

 そもそも厚労省が調査を実施したのは、強制不妊被害者の救済法案を検討する与党ワーキングチーム(WT)と超党派議員連盟から要請を受けたためだ。記録の洗い出しを求めず、任意にしたのも「現場の事務負担に配慮するよう、(議員側に)求められたから」と同省担当者は説明する。国会議員の意向をくんだといい、同省の主体性の低さが際立つ。

 被害者の支援団体「優生手術に対する謝罪を求める会」は昨年12月、救済法案の基本方針を受けて「調査は不十分な可能性がある。国は予算を付けてでも調査の継続を促すべきだ」と要望している。

【 2019年03月02日 13時30分 】

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