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社説:悪質クレーム お客さまは神様、ですか

 レジの前で店員に、おじさんが大声でどなってる。

 そんな度を越したクレームを目にすることが、多くなった気がします。コンビニや駅などで「謝れ」と繰り返し、「アホ、バカ」と罵倒する光景です。

 店員や駅員が気の毒に思えてきます。

 気をつけて書かないといけないでしょう。何も客のクレーム自体がおかしいというのではありません。

 クレームは本来、商品やサービスの問題を指摘し、改善を求める声です。企業や店はしっかり受け止め、改善すべきは改善する。そうすることで、商品やサービスの質は向上し、店にも客にも良い循環になります。

 ここで指摘したいのは、度を越した悪質な場合です。一部の客の行為とはいえ、放置されることで社会にまん延しかねない、という懸念です。

 労働組合UAゼンセンが2017年に、販売やレジなどの従業員にアンケート調査しました。それによると、回答のあった5万人超の7割強が悪質クレームなどの迷惑行為を受け、そのうち約9割がストレスを感じていました。

 事例を読むと深刻です。「土下座での謝罪を要求されました」「お前なんか首にするぞ、と延々怒られました」「3時間説教され続けました」「殴りかかるしぐさを何度もされました」

 暴言、説教、威嚇・脅迫、長時間拘束を受け、中には精神疾患になったケースもあります。近年増えている、と5割近くが答えています。

 こうした客による悪質クレームや迷惑行為は、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれ問題視されています。

 厚生労働省の審議会で、カスハラ禁止について議論されましたが、今国会に提出予定の女性活躍・ハラスメント規制法案には入りませんでした。

 カスハラが社内ではなく客や取引先との間で起き、労働法制での対応は難しいというのが理由です。政府は指針を作成し、企業の対応方法を示すことにしています。消費者の正当な権利を見据えつつ、悪質なクレームの具体例などを示し、従業員らを保護する手だてが求められるでしょう。

 いずれにしても、脅迫など犯罪はもちろん、社会通念上受け入れられない行為には、毅然(きぜん)とした態度を示すことです。

 先のアンケート調査で、悪質クレームの原因について気になる回答がありました。「消費者のモラル低下」「消費者の過剰な期待」「ストレスのはけ口になりやすい」

 「お客さまは神様です」という言葉を都合よく受け止め、消費者なら何でも許されるという誤った特権意識に陥っていないでしょうか。加えて社会全体が不寛容になっていることも背景にあるように思えます。

 正当なクレームが時に感情のコントロールを失って、罵倒に変質してしまう。あり得ることです。商品やサービスに問題があれば、冷静に指摘し、改善を求めればいいのです。

 胸に手を当てて、自身の態度を見つめ直してみました。

【 2019年03月17日 12時51分 】

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