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国の号令で右往左往 丹後リゾート構想、後遺症深く

宮津市が国の地方創生関係交付金を活用して開設した道の駅「海の京都 宮津」(京都府宮津市浜町)
宮津市が国の地方創生関係交付金を活用して開設した道の駅「海の京都 宮津」(京都府宮津市浜町)

 丹後半島の高台にある広大な敷地に、コテージやセミナー棟などが立ち並ぶ。森の恵みを体験できる木工教室や自然学習などを親子連れが楽しんでいる。

 京都府宮津市の京都府立丹後海と星の見える丘公園。実は平成の初め、1989年に府が策定した「丹後リゾート構想」では、中核拠点になるはずだった。

 リゾート構想の背景には、国が87年に制定した総合保養地域整備法(リゾート法)がある。バブルの勢いを地方に届けようという国策。税減免や地方債の発行特例、開発規制の緩和を打ち出した。京都府や滋賀県など41道府県が名乗りを上げる。

 さらに88~89年には竹下登首相が「ふるさと創生事業」を打ち出す。国から市町村に1億円ずつ配ったが、多くが施設などハコモノ整備に費やされた。

 熱に浮かされたような一連の事業は、91年のバブル崩壊で冷や水を浴びる。各地の構想が次々と暗礁に乗り上げ、リゾート法に基づく指定第1号だった宮崎市の施設「シーガイア」が破綻した。現実離れした集客見通しが露呈し、折からの金融不安で民間資金も集まらなくなった。京都も例にもれない。ホテルやショッピングモールなど丹後リゾート構想の55事業は、大半が中止となった。

 あれから30年。同構想に盛り込まれながら、民間資本の撤退で立ち消えとなっていた宮津市の観光案内所や海産物販売センターの整備構想が、安倍政権下で14年に始まった「地方創生」によって再び動き出した。

 国が用意した地方創生に向けた交付金に、日本三景の天橋立がある市は「外貨を稼ぐ観光革命」を掲げた新計画をまとめて飛びついた。結実したのが道の駅「海の京都 宮津」だ。

 2月の晴れた昼下がり、海沿いの同駅を兵庫県川西市から訪れた60代の夫妻は、やや不満げだった。「規模が小さく、海の特産品もあまりないのでインパクトに欠けますね」。来客は少しずつ増えているが、インターネット上の評価は伸び悩む。

 市財政は19年度から5年間で40億円の財源不足が見込まれ、観光を基幹産業に育てられる見通しは立たない。「国に頼らずに自立できればいいが、交付金を活用せざるを得ない仕組みが続いている」。城崎雅文市長は打ち明ける。

 京都大の岡田知弘教授(地域経済学)は「観光業だけで地域経済を支えるのではなく、医療福祉や農業といった足元の資源と結び付け、地域にお金が循環する取り組みを地道に続けるべきだ」と警鐘を鳴らす。

■問われる観光の自治

 小泉政権で始まった「ビジット・ジャパン・キャンペーン」は、2009年に発足した民主党政権でも引き継がれた。前原誠司国土交通相(当時)による訪日中国人の個人ビザ発給や羽田空港の国際ハブ(拠点)化は、今につながる訪日客増加の足がかりとなった。

 安倍政権は観光産業を「成長戦略」の柱の一つと位置づけ、訪日客を東京五輪開催の20年に4千万人とする目標を掲げた。25年の大阪・関西万博を見据えてカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法を制定した。21年度中に京都へ移転する文化庁の政策でも、文化財を観光に活用する動きが強まっている。

 ところが足元では、観光産業が不安定な非正規雇用に支えられている問題が象徴するように、国と地方の政策のはざまでひずみが生じ、自治体が対応に苦慮すしている。

 観光の経済効果に期待して国が旗を振り、地方で明暗が分かれる構図が繰り返し浮かんでは消えた。典型例が「リゾート法」や「ふるさと創生事業」だ。地方は活性化を信じて知恵を絞ったが、効果を生んだ事業もあれば、今なお「負の遺産」の処理に追われる自治体もある。

 さらに国と地方の構造的な課題が見て取れるのが、京都市の財政状況だ。

 17年の市内の観光消費額は、訪日客の消費単価の伸びもあって前年比3・7%増の1兆1268億円と過去最高を更新した。一方で、行政サービスの財源となる市税収入は17年度に2557億円と、1・6%増にとどまる。観光産業は大企業よりも中小零細企業が多く、法人が納める税の9割が国や京都府に入る仕組みが影響している。市幹部は「税制から見直す必要がある」と指摘する。

 近年は観光客の急増や集中が市民生活に悪影響を及ぼす「観光公害」への対応も迫られ、市は昨年から宿泊税の徴収を始めた。宿泊税導入の動きは全国に広がっている。

 「観光産業を革新し、わが国の基幹産業に」。国の観光白書には力強い文言が並び、経済政策の効果を列挙している。観光客数や消費額などの数値を追えば成果を示しやすいが、それだけでは人口減少時代を生き抜くための長期的な展望は語れない。安心して働き、住み続けられるまちを将来に引き継ぐため、観光政策を地方自治の中にどう位置づけるかが問われている。

【 2019年03月18日 09時50分 】

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  • 宮津市が国の地方創生関係交付金を活用して開設した道の駅「海の京都 宮津」(京都府宮津市浜町)
  • 京都市の市税収入と観光消費額
  • 観光政策関連年表
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