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社説:成年後見の報酬 利用者目線の議論要る

 最高裁が、認知症や知的障害などで判断力が不十分な人を支援する成年後見人の報酬を改める考え方を示した。

 利用者の財産額に応じて決める現在の算定方法をやめ、業務の難易度で金額を調整する。介護や福祉サービスの契約など日常生活の支援に報酬を手厚くするという。

 利用者から「後見人が報酬に見合った仕事をしない」との不満が出ていた。現場の声を踏まえ、生活支援を重視する方向への転換を打ち出したことは評価したい。

 ただ、気がかりなのは生活に困難があり、支援が必要な人ほど負担が増える可能性があることだ。低所得者の中には報酬が支払えず、制度が利用できなくなるとの懸念も根強い。

 算定方法の詳細は今後、各家庭裁判所の裁判官が決める。今回の見直しは日弁連など後見業務を担う専門職の団体と議論したが、利用者団体は参加していない。検討にあたっては利用者の意見を反映させる決め方も必要ではないか。

 成年後見制度は、認知高齢者らの財産管理やサービス手続きなどを代行する仕組みだ。本人や家族が利用を申し立て、家裁が後見人を選任する。現在、弁護士などの専門職が約7割を占める。

 報酬は一部家裁が目安を示しているが、透明性は低く、利用者の間では「高い」との見方も多い。

 新たな仕組みでは、定額報酬は廃止の方向だ。財産目録の作成や本人との面会など業務の実績に応じて支払われるようになる。

 生活支援を重視する報酬算定の実現には、弁護士や司法書士らの意識改革が必要だろう。

 利用者の意思確認や支援に消極的な後見人が多いとみられるからだ。国の委託で社会福祉法人が2017年度に知的障害者入所施設を対象に実施した調査では後見人の面会頻度は「年1~2回」「ほぼ来ていない」で4割に上った。

 後見人の仕事を監視する家裁の在り方が問われよう。報酬の見直しが実施されれば、業務の増大も予想される。支援の内容が適切かどうかチェックする態勢も必要だが、人員不足が指摘されている。各地の社会福祉協議会など民間の支援事業の活用も検討してはどうか。

 最高裁は後見人の交代を柔軟に認めるほか、選任では親族らを優先する考えも示した。認知症の高齢者は25年に65歳以上の約5人に1人に当たる約700万人になるとの見通しだ。より国民に身近な制度とするためにも利用者目線に立ち、議論を深めたい。

【 2019年03月27日 11時31分 】

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