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社説:ひきこもり調査 高年齢化踏まえ対策を

 40~64歳のひきこもりの人が全国で約61万人に上ることが内閣府の調査で初めて明らかになった。

 ひきこもりは若者特有の現象というイメージがあるが、長期化・高年齢化が裏付けられた形だ。

 個々の実態把握が難しいだけに、現実を具体的に浮かび上がらせた意義は大きい。

 ただ支援の手が十分届いているとは言い難く、事態は深刻だ。国は背景を分析し、有効な対策を打ち出してほしい。

 調査は全国5千世帯を調査員が訪問し、本人や家族から外出の頻度や生活水準などを聞き取った。

 男女別では男性が8割近くに上る。ひきこもりの期間は「7年以上」が合計で全体の半数近くを占めた。

 きっかけは「退職」が36%と最多で「人間関係がうまくいかなかった」「病気」が各21%で続く。

 就職氷河期世代に当たる40~44歳の3人に1人は「20~24歳」でひきこもり状態になっていた。就職活動がうまくいかなかったり、職場でつらい経験をしたりしたことが原因になった可能性がある。

 人口減少時代を迎え、本来は企業や地域の中核をなすはずの人材が社会に参画していないことは大きな損失といえる。きめ細かなサポートが早急に求められる。

 気になるのは、父親か母親が生計を立てているとしたのが34%に上った点だ。親の年金が頼りというケースもあり、高齢の親に経済的に依存する姿が浮かぶ。

 だが親の介護費や病気の治療費がかさめば、生活困窮に陥りかねない。行政はセーフティネットに漏れがないか再点検すべきだ。

 2015年施行の生活困窮者自立支援法でようやく40歳以上が支援対象になったが、相談窓口を設置しているだけの自治体も多い。

 ひきこもりの人は自らを責め、なかなか周囲に相談できない。当事者と支える側をつなぐため工夫が必要だ。自宅訪問や居場所づくり、就労訓練などに対応する専門の支援体制をつくってはどうか。

 根本匠厚生労働相は「大人のひきこもりは新たな社会問題」と述べた。ひきこもりの人は15年の若年層の調査で15~39歳が推計54万人に上り、累計で100万人を超えるとの見方もある。社会全体で関心と理解を深めたい。

 大人のひきこもりの背景はいろいろあるが、生きづらくなる原因がどこにあるのかも考えねばならない。ひきこもらざるを得なくなるような社会のありようを見つめ直し、実態を踏まえた支援の形を官民で議論する必要がある。

【 2019年03月30日 11時06分 】

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