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社説:夫婦別姓の議論 まだ放置を続けるのか

 立法と司法の不作為が問われているのではないか。

 日本人同士の結婚で夫婦別姓を選べないのは、法の下の平等や個人の尊重を規定した憲法に違反する、と問う訴訟の判決があった。東京地裁は合憲と判断した。

 戸籍法の規定では、日本人と外国人の結婚と離婚、日本人同士の離婚の場合などには別姓を選べる。

 結婚して妻の姓に変えた会社社長が、戸籍法には不備があり、会社経営の実務に支障が生まれたとして、国を相手に損害賠償請求訴訟を起こしていた。

 最高裁は2015年、夫婦どちらかの姓を名乗るよう定めた民法750条について、「社会に定着している」として合憲判断を出している。

 今回の裁判は、戸籍法の条項が問題となり、東京地裁は、15年判決と同様に民法の規定を合憲と判断した。その上で、法律上の姓は一つが前提で、戸籍法が別姓を認めていないことには合理性があると結論づけた。

 民法と戸籍法の規定が矛盾している事実には言及していない。「日本人同士だけが別姓を選べないのはおかしい」という原告の問いには答えなかった。

 15年の最高裁判決は合憲判断に際し、夫婦の姓のありかたについて国会での議論を促した。大法廷の裁判官のうち女性3人を含む5人が違憲と判断した。

 今回の東京地裁判決も「現行法制度で別姓が認められていないことによる不利益は、立法裁量にゆだねられた問題」と指摘した。

 1996年に法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を法相に答申してからすでに22年以上が経過している。

 この間、国会が放置を続けているのに、司法はまたも前例踏襲の判断を示した。原告が「司法の側からおかしいと声をあげてほしかった」と述べているのは当然だ。

 民間では旧姓使用が一般的になっている。国家公務員の旧姓使用も大幅に認められた。一方で、二つの姓を使い分けることの負担が聞かれるようになっている。

 法務省によると、夫婦同姓を義務とする国は他にない。それなら、「別姓は家族を崩壊させる」という指摘は当たらないだろう。

 原告らが求めているのは、夫婦が望むなら別姓を選べる制度だ。すべての結婚に強制するというものではない。

 家族や生き方の多様性を認め合うために、国会や裁判所はそれぞれの責任を果たしてもらいたい。

【 2019年04月03日 12時32分 】

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