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社説:大戸川ダム推進 知事の方針転換は疑問

 幅広い議論がないままに出された判断であり、大いに疑問だ。

 滋賀県の三日月大造知事が、凍結中の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について方針を変え、国に建設を求めていく考えを示した。

 専門家との勉強会で検証し、ダムに一定の治水効果が認められたというのが理由だ。

 しかし、勉強会は3回開かれただけ。県がデータを示して説明し、専門家が意見を述べる形だが、ダム建設を前提にした議論に見える。異論を示す識者が参加していないのは、どうしたわけか。

 そもそも大戸川ダムに一定の治水効果があることは、凍結時点でも認められており、勉強会で検証するまでもない。もっと多角的な視点から議論すべきだった。

 2008年に滋賀は京都、大阪、三重を含む淀川水系流域4府県で、大戸川ダムについて「施策の順位が低い」として「凍結」を求める合意書を出している。

 1997年の河川法改正で淀川流域の河川整備計画策定に、関係知事の意見が求められたからだ。

 これからの焦点は京都、大阪が滋賀に同調するかだが、両府とも慎重な姿勢だ。というのも重い費用負担が背景にある。総事業費1080億円のうち、滋賀は8億円なのに大阪187億円、京都が129億円と多い。下流にダムの恩恵が及ぶという考えからだ。

 どこも財政状況は厳しい。ダムに一定の治水効果があっても、巨額の建設費に見合うのか。急を要する河川改修なども多く、優先順位を付けるのは当然といえる。

 一方で、国土交通省はすでに大戸川ダムの事業継続を決定しており、近畿地方整備局の有識者会議はダムをめぐる検証結果を近くまとめる予定だ。滋賀の方針転換は、こうした国の動きに伴ったものだろう。

 ダム建設への流れではないか。ならば専門家にとどまらない、住民参加の議論が必要だ。

 2003年に「ダムは原則建設しない」と提言した淀川水系流域委員会は、国交省の下であっても熱い議論を繰り広げた。治水のほか環境、まちづくりなど多様な分野の専門家、市民が加わり、情報公開を徹底した。淀川モデルといわれた理念を思い起こしたい。

 自然災害が多発している。想定外の暴風雨で、ダムや河川が決壊の危機に陥る事態も少なくない。警報や避難など防災・減災のあり方を根本から考え直す時ではないか。ダムだけを見ずに、広い観点から議論をしていく必要がある。

【 2019年04月18日 12時12分 】

岸田繁 交響曲第一番・第二番 連続演奏会 2019.10.5

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