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社説:成年後見申請 自治体格差を解消せよ

 認知症や知的障害などで判断力が不十分な人の財産管理や生活を支援する成年後見の取り組みについて、自治体間で大きな差があることが分かった。

 親族らに代わって市区町村長が利用を申し立てるケースである。厚生労働省の調査を基にした分析によると、申し立て件数の差は都道府県間で最大約6倍となった。

 成年後見は2000年に導入され、家庭裁判所が申し立てを受け後見人を選任する。18年末時点で利用者は約21万8千人いる。

 身寄りのない単身高齢者の増加に伴い、首長申し立ては年々増え、18年には利用が決まった件数全体の21%を占めている。

 とはいえ認知症の人は約500万人ともいわれ、成年後見が浸透しているとはいいがたい。政府は権利擁護の観点から利用を促しており、自治体間の差をどう埋めるかが問われよう。

 17年度の首長申し立ての件数は全国で7336件あり、高齢者と知的・精神障害者計10万人当たりの件数を算出すると、最多の宮崎県は43・0件、最も少ない栃木県は6・8件だった。

 この差に、合理的な理由があるとは考えにくい。

 申し立てが適切に行われていない自治体では、独居の高齢者らが消費者被害に遭ったり、福祉サービスを利用できていなかったりする恐れがあるという。

 しかも全体の43%に当たる741自治体では件数がゼロだった。支援すべき人の存在に気づいていない可能性がある。

 権利を侵害されやすい認知症の高齢者が、住み慣れた地域で安心して暮らすためにも、積極的な取り組みが必要ではないか。

 申し立てが低調な理由には、制度に関する職員の知識不足や、自治体側の手間、費用負担が生じることがあるとみられる。

 申し立ての手法の周知が欠かせない。件数最多の宮崎県では、介護の相談機関の職員に研修をしている市もあり、支援が必要な人を掘り起こしている。

 一方で、首長による利用申し立ては、公権力が本人の生活を一変させるという恐れもある。

 利用者目線に立ち、意思をくみ取った丁寧な運用が求められる。

 認知症の高齢者は25年に65歳以上の約5人に1人に当たる約700万人になるとの見通しだ。

 制度をうまく活用すれば、家族による虐待の防止などにもつながる。知恵を絞って取り組みの差の解消を進めてほしい。

(京都新聞 2019年05月13日掲載)

【 2019年05月13日 11時00分 】

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