出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

「幼い命、なぜ失われたのか」5年前のプール事故、損賠判決へ

プール事故で亡くなった天翔ちゃんの写真を見つめ「事故を風化させず、命を守る保育が広がってほしい」と語る榛葉英樹さん(京都市上京区)
プール事故で亡くなった天翔ちゃんの写真を見つめ「事故を風化させず、命を守る保育が広がってほしい」と語る榛葉英樹さん(京都市上京区)

 安全であるはずの保育園で何が起きたのか-。2014年夏、京都市上京区の保育園「せいしん幼児園」で、プールで遊んでいた榛葉天翔(しんばあもう)ちゃん=当時(4)=が死亡した事故から約5年。両親らが園を運営する社会福祉法人「正親福祉会」(同区)に対して損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、京都地裁で言い渡される。父親の英樹さん(48)は「天翔との時間は取り戻せない。幼い命がなぜ失われたのか、事故を風化させず社会全体で考えてほしい」と訴える。

 事故は14年7月30日午後2時ごろ、園舎屋上のプールで起きた。約30人の園児がプール遊びをする中、天翔ちゃんが水に沈んでいるのを保育士が見つけた。既に呼吸と心肺が停止している状態で救急搬送された。

 「トイレで嘔吐(おうと)して倒れた。意識はある」。両親は当初、園側から電話でそう聞いていた。しかし、病院で医師から「意識がない。1分1秒を争う状況」と説明を受けた。英樹さんは園長に説明を求めたが「適切に処置をした」と繰り返すばかり。保育士が「プールでおぼれた」と話し、ようやく状況を把握した。

 天翔ちゃんは一度も意識が戻らないまま、1週間後の8月6日、低酸素脳症で亡くなった。「一度も目を開けることなく、家族とのお別れもできなかった」。英樹さんは今でも当時を思い出すと震えが止まらない。

 あの日、プールで何があったのか。両親は当時の状況について園に説明を求めたが、「責任はない」として面会も断られた。

 事故を受け、京都市は園に対して特別監査を実施。報告書では、保育士がプールから目を離す時間があったなどとして監視の不十分さを指摘した。しかし、事故原因は特定されなかった。

 真相解明を願う両親は15年3月に京都地検に当時の園長ら4人を業務上過失致死容疑で告訴したが、不起訴処分(嫌疑不十分)に。16年に検察審査会が不起訴不当と議決したが、地検は再び不起訴とした。

 16年に提起した民事訴訟で、両親側は、天翔ちゃんの死因はプールでおぼれた「溺水」だと主張する。一方、園側は「死亡に至る原因は給食の吐しゃ物を飲み込んだことによる窒息死などの可能性がある」と請求棄却を求めている。

 英樹さんは事故後、保育士資格を取る際に救命講習などを義務付ける法整備や保育士待遇の向上を求めて活動を続ける。「保育中の4歳児が亡くなった事故の重大さを忘れず、命を守るという保育の大前提を徹底してほしい。みんなが天翔を忘れないような判決が下されることを望みたい」

【 2019年05月15日 19時26分 】

ニュース写真

  • プール事故で亡くなった天翔ちゃんの写真を見つめ「事故を風化させず、命を守る保育が広がってほしい」と語る榛葉英樹さん(京都市上京区)
京都新聞デジタル版のご案内

    地域の政治・社会ニュース

    全国の政治・社会ニュース