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社説:交通事故の犠牲 小さな過失見過ごすな

 大津市の園児2人の命が奪われた、痛ましい事故から1週間がたった。

 悲惨な交通事故が起きるたびに、二度と繰り返してはならないと誓う。なのに後を絶たないのは、どうしたわけか。

 大型連休前には東京・池袋で、神戸市の駅前で、歩行者が巻き込まれて死亡する事故が相次いだ。ブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性が大きいという。

 ささいなミスが大事故につながる。そうと頭で分かっていても、日常の運転では意識にのぼらずに、やり過ごしていないか。

 「人間はミスをする」という前提で、ドライバーの認知・判断・操作への支援技術を確立する-。日本学術会議の安全・安心・リスク検討分科会による提言である。

 2008年に政府に示したものだが、工学や心理学などの大学研究者、専門家による知見であり、今も示唆に富む。

 この中で「交通事故の件数の多さが見過ごされがち」と意表を突く指摘をしている。死亡事故の減少傾向に目が向きがちだが、発生件数をみると、昨年は47万件超にもなる。

 日常の光景であり、人身事故でなければ、あまり問題視されない。車の便利さを考えて、「やむを得ない」「運が悪かった」で済ませていないか。こうした意識を変えるべきと提言は強調する。

 同時に、小さな事故を大事故につながる「ヒヤリハット」の事象ととらえ、科学的に分析するよう求めている。たとえば、ドライブレコーダーのデータを集め、その分析を生かしてドライバー教育や運転操作の支援装置に役立てる。

 こうした先端技術の積極的活用は、政府の交通安全基本計画に盛り込まれている。多くの新車に衝突回避装置などが装備されるようになっており、普及を加速させてほしい。官民挙げて進める車の自動運転の研究も、歩行者の安全を第一に考えるべきだろう。

 安全装置があるとドライバーはその分だけリスクを高める傾向があるという。技術が進歩しても、大切なのはドライバーの安全意識であることに変わりない。自身の運転を冷静に見つめ、日頃から安全な運転を心がけるようにしたい。

 交通事故死で、歩行者の割合が日本は欧米に比べ高い。なぜなのか。ドライバー意識や交通環境など、あらゆる観点から見つめ直す必要があろう。痛ましい事故を繰り返してはならない-誓いを、行動に移さないといけない。

【 2019年05月16日 10時32分 】

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